ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

伊坂幸太郎「マイクロスパイ・アンサンブル」(幻冬舎)

伊坂さんの新刊。二つの世界が交互に描かれる、最近の伊坂作品では割合多い

構成の作品。

もともと、猪苗代湖で毎年開催されていた『オハラ☆ブレイク』という音楽と

アートのイベントで配られる小冊子に寄稿されていた作品だそうな。それを一つに

まとめて、加筆修正したものだそうで。

猪苗代湖が出て来るのは、そういう理由だったのか、とあとがきで腑に落ちました。

毎年一回、猪苗代湖の基地に侵入してはトラブルに巻き込まれるスパイ』と、

『就職し、会社員として苦労する若者』のお話が交互に語られます。これが少し

づつ物語の中で交差していくお話。

うーむ。正直、ピンと来なかったというのが素直な感想。年に一回掲載されるお話

だからなのか、いつもの伊坂作品ほどには伏線も緻密ではなかったように思うし。

それぞれの物語はそれなりに面白く読めたのだけど、二つが交わって行く必然性

みたいなものがあまり感じられなかったんだよね。片方のお話は完全にファンタジー

めいているし。会社員の方はもろに現実的なお話で、なぜその二つが交差して行く

のか、という部分の説得力に欠けているように思えて。片方がなぜか小人みたいな

小ささっていう設定もよくわからなかったし。

個人的には、会社員サイドのお話の方が面白かったです。特に、謝ってばかりの

上司が、宝くじに関してとんでもない事実を告げた辺り。その伏線が、ラストで

効いて来るところは伊坂さんらしくて良かった。でも、伏線で驚けたのはそこ

くらいだったような。

いじめられっ子がスパイとして活躍するサイドは、もう少し説明が欲しかったと

思う。何か、いろいろ説明不足で、ついていけないまま読み進めて行った感じ

だったので。ちょいちょいピンチに陥って、その度に奇跡が起きるってのも

ちょっとご都合主義的に感じちゃいました。

戦闘機が虫ってのもね。何で?って感じでしたね。マイクロスパイだからなんで

しょうけど・・・うーん。

まぁ、私の理解力に大いに問題があることは間違いない所なのですが・・・^^;

年取って来て、読解力とか物語の理解力とか、確実に衰えて来ているのを感じる

んですよね・・・。

あと、出て来る音楽も、いまいち作品に合っているのかよくわからなかった。

歌詞の引用がたくさん出て来るのですが、あまり好きなタイプの歌詞ではなかった。

バンドのファンの方なら嬉しいと思うのですけども。

しかし、ザ・ピーズってまだ活躍してたんですねぇ。びっくり。このバンドに

関しては、ちょっと個人的に思い出がありましてね。いや、ファンとかじゃ全く

なくて、何ならどんな音楽なのかすら知らないんですけども(←失礼)。

っていうか、私が知ってるザ・ピーズと同じバンドのことじゃなかったら

ゴメンナサイ、なお話なんですけどね^^;久しぶりに名前を見て、懐かしい

思い出が蘇ったもので。まぁ、詳細は省きますけど(省くんかい)。

どうも、ここ最近の伊坂作品はピンと来ないものが多い気がするなぁ。伊坂さんが

書きたいものと、私の好みがズレて来ているのかもしれない。

まぁ、それでも、出れば読んじゃうんですけどね。