ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

加納朋子「空をこえて七星のかなた」(集英社)

あああ、めっちゃすっきりしたーーーー!!っていうのが、読み終えた直後の感想。

あ、失礼しました。大・大・大好きな加納さんの最新作です。今回も、期待に

違わぬ良作でしたねぇ。あの大病後は、作品が出るだけで感動してしまえる

ところもあるのですが。作品のクオリティも全く下がっていないところが

素晴らしいですね。

 

※以下、ネタバレ気味感想になっております。

少しでも読まれる可能性のある方は、ぜひ読まれてからお読み下さい。

先入観なしに、読んで頂きたい作品なので。

読む予定のない方は、どうぞお進み下さいませ。

 

 

 

 

 

星をテーマにした短編集・・・と思ってました。最初の何作か読んでる限り、

それぞれの作品に特にリンクはなさそうで、単純に宇宙とか星とかがテーマ

の物語ばかりを集めた作品集なんだろうな、と。一生懸命、リンクを探して

みたりしてたんですけどね。特に見つからなかったもので。ただ、共通点として、

登場人物の名前に星関係の字が使われているくらいだったりしたんで。タイトルに

七星が入っているので、一話目の主人公七星(ななせ)がその後も出て来る

のかな、と考えたりもしてたんですけどね。二話目三話目と進んでも、全く

出て来ないし、登場人物もまったく重複してないしで、今回は連作短編じゃ

ないんだろうな~と思い直しながら読み進めてたんですけどね。

加納朋子を完全に侮ってましたね。6話目で、ようやく七星が再登場して、そこから

怒涛の如くにすべてがつながって行くところは、圧巻でしたね。ああ、そうか。

この人物があの人で、ここがこう繋がって・・・と、一気にすべてが腑に落ち

ました。まさに目からウロコ・・・!!!

もちろん、一話ごとに単独で読んでも、十分読ませるお話ばかりではあるのですが。

ばらばらに思えたピースが一つにつながって行く爽快感ったら。ああ~~~、

気持ちイイ~~~~って感じでした。

まぁね、一作づつ読んでいる時も、いやに美形の人物が毎回出て来るなぁとか、

ひっかかる部分はあったのですけどね。

それが全部、アノ人を指していたとはね。

二話目の、オイラ呼びの少年までもがそうだとは。どのお話にも、魅力的な

人物として登場するけど、印象はその都度全く違うし。ビジュアルだって、

美形ってくらいしか共通点なさそうだし。いやー、やられましたね。

でも、確かに、わかってみると、伏線はちょいちょい張られているんですよね。

なぜわからなかったのか、自分。

オイラ呼び少年の本名がそのお話の中ではわからないままで終わってしまって、

モヤモヤしていたところもあるので、ラストですっきり。

ラスト一話でそれまでの登場人物が一気に再結集するところも良かったです。

こういう作品だと、結構人間関係が複雑で、人物相関図が欲しくなったりする

のですが、今回はラストまで読めば相関図とかなくても、人物関係がわかりやす

かったので、特に混乱することもなかったです。さすが加納さんだ。

7つの物語が北斗七星の如くに一つに繋がって、最後にはくっきりとした

物語の形が見えました。素晴らしい作品構成でした。

連作短編集の名手の面目躍如という作品だったと思う。

読み終えて、すべてが繋がったことですっきりしたと同時に、未来の宇宙に思いを

馳せながら、温かい気持ちで満たされました。

加納さんの魅力が凝縮された作品集だと思う。

殺伐とした今の世の中だからこそ、多くの人に読んでもらいたいです。