ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

燃え殻「それでも日々はつづくから」(新潮社)

燃え殻さんの最新エッセイ。燃え殻さんの作品、小説も一作読んだけれど、

やっぱりエッセイが好きだな。

さらりと何気ない言葉で核心をつくような文章を綴っているので、結構心に

刺さる。前のエッセイでも感じたことだけれど、ご自身が過去に辛い思いを

たくさんされているせいか、基本的にご自分にあまり自信がなくて、自虐っぽい

ネタも多いのですが、そこが自分的には共感出来たりする。それに、他人に対する

目線が優しいんですよね。女性との遍歴は結構めちゃくちゃだったりして、だらし

ないところもあるんですけど。でも、どんな女性に対しても、付き合っている時は

真剣だったのがわかるし、不思議と嫌悪感はなかったりする。普段の私だったら、

こういうタイプは全く好感持てなかったりするんですけども。

自分に正直で、不器用な生き方しか出来ない人なんだろうなぁと思う。でも、

そんな不器用な燃え殻さんから出て来る言葉が私はとても好きです。本当に何気ない

日常が、燃え殻さんの言葉で語られると、ちょっぴり感動的な場面に変わって

しまったりするから不思議だ。電車や飲食店で隣り合っただけの人、元カノ、

仕事で知り合った人・・・どの人とのエピソードも、燃え殻さんが語ると、

ちょっとした気づきがあるように思える。みんな必死に生きてると感じられる。

個人的には、週刊新潮宛に届いた、ファンレターくれたおじいさんのエピソード

がとても微笑ましくて好きだった。あとは、元カノとの切ない別れを綴った回も

印象的だったな。彼女はきっと、燃え殻さんのことが大好きだったに違いないと

思えて、切なかった。でも、お互いに好きでも、別れなきゃいけない時も

あるんだろうな。

どんなに辛い日常でも、それでも日々はつづいて行くから、頑張って生きようよ、と

メッセージを送ってくれているように思えました。燃え殻さんご自身が、そう

言い聞かせて辛い日常を生きているのかもしれないですけれど。

コロナや戦争、燃料や物価の上昇、元首相の暗殺・・・辛いニュースに心を痛めて、

胸が塞がれる日々が続くけれど、ほんの少し、救われる気持ちになれました。