ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

知念実希人「優しい死神の飼い方」(光文社文庫)

新着図書で文庫版が入った際に、あらすじ読んで面白そうだったので借りてみました。

知念さんは『硝子の塔の殺人』が面白かったので、ちょっとづつ読んでいけたら

いいなぁと思っている作家さんのひとり。もともとは医療ミステリー系の作品が

多い方のようですが、本書はそれにちょっとファンタジー要素を加えた変化球

作品と云えるでしょうか。他の医療ミステリー作品を読んでないので、比較が

出来ないのですが^^;

死神のレオの仕事は、人間の死に立ち会い、肉体から離れた『魂』を、『我が主様』

の元へと導くこと。しかし、ごくたまにこの世に未練を残す魂は、その場に留まり、

地縛霊となってしまう。肉体を失った魂が長時間その場に留まると、やがて消滅

してしまう。レオは、最近担当する魂が消滅する確率が高くなっていた。すると、

直属の上司はレオに、地上に降り立ち、死ぬ前の人間と接して、未練を残さないよう

働きかけるように命じられてしまう。しぶしぶ承知したレオは、なぜか『犬』の姿

で地上に落とされる羽目に。レオが放り出されたのは、終末医療専門のホスピス

だった。レオは、このホスピスに、未練を残して地縛霊になりそうな人物が四人

いることを突き止め、一人づつ接触を図ることに――。

犬の姿を借りた死神という設定が、なかなか面白かったです。死神のレオが、地縛霊

予備軍の人物と接触を図り、その人物の未練となるものを取り除き、憂いなく

あの世へ行けるように取り計らって行くという、切なくも温かいハートフルストーリ

ー。せっかく憂いを取り除いて、当該人物とレオが心を通わせるようになっても、

当の人物の命は残り僅かということがやりきれなかったです。特に、四人目の人物

に関しては、何らかの奇跡が起こるのではと最後まで期待していたのですが・・・。

死神のレオは、あくまでも死神なのでした。でも、最後の人物に関しては、死神

としての規則を破ってまでも、その人物の憂いを取り除いてあげようとした。人間

と直接触れ合うことで、レオの心情が少しづつ変化して行くところが良かったです

ね。

レオが犬の姿というところが、緊迫した場面も多々ある物語の中で、ほのぼのと

した明るさが感じられて良かったですね。レオを拾ってくれた菜穂とのやり取り

や関係が好きでした。それだけに、ラストは切なかったですが・・・。

ひとつ気になったのが、借りの姿とはいえ、実在する犬に憑依(?)している

レオに、好物だからって、やたらと菜穂がシュークリームを与えるところ。犬

にとって毒ではないんでしょうが、シュークリームという人間の食べ物をあげる

ってあまり良くないのでは?私は犬を飼ったことがないので、正確なことは

わかりかねるのですが・・・。甘い砂糖やバターを使ってる訳で。食べさせて

いいものなんでしょうか?塩分が入ってなければいいものなのかな??

ご存知の方に教えて頂きたいです^^;

ものすごい高額のダイヤがあんなところにあったというのは、ちょっと現実的

じゃないなと思ったし、個人の家を買い取って病院にするっていうのも無理が

あるような気がするしで、ちょいちょいツッコミ所は満載だったようにも

思いますが、心優しい死神と人間の交流に心が温まりました。

死神に上司や同僚がいるっていうのも面白い設定でしたね。続編あるのかな?と

調べてみたら、他に二作もあるんですね^^;そういえば、本書を予約したのも、

続編っぽい新刊が出ていたからだったような・・・(時間が経ってその辺りの

経緯も忘れていた^^;)。とりあえず第二弾から早めに読まなくては。