万城目さんの最新作。前作がかなりの大作だったので、今回はどんな感じかな?と
少々身構えたところがあったのですが、なんとも軽く読める青春ファンタジー小説
でした。主人公は吸血鬼の両親から生まれた、生粋の吸血鬼少女・嵐野弓子。
ただし、現在生息している吸血鬼は、今の社会に適応するよう、少しづつ生態を
変えて、脱・吸血鬼化を図って来た。日の光も大丈夫だし、鏡にもきちんと映る。
もちろん、人の血を吸うこともない。ただし、ニンニクは少し苦手。16歳の
弓子は、これまで問題なく人間に紛れて生きて来れた。そして、17歳になる
弓子は、人間社会に更に溶け込んで生活出来るよう、更に一歩進んだ脱吸血鬼化
への儀式を受ける予定になっている。すると、ある朝突然、儀式を滞りなく遂行
出来るよう、弓子の前にQと呼ばれる見届け役が現れた。見た目が気持ち悪く、
質問にもろくに答えてくれないQに腹を立てる弓子だったが――。
現代版の吸血鬼である弓子が経験する、波乱万丈の青春ストーリー。笑いあり、
冒険あり、涙あり。怒涛のエンタメ展開で、飽きることなく読み通せました。
吸血鬼の固定観念を根底から覆す設定に目が点になりました・・・。万城目さんの
頭の中は一体どうなっているんでしょうか(苦笑)。現代社会で生きて行く為に、
吸血鬼たちが人間に近くなるよう、進化しているというのが面白い。バイタリティ
溢れる弓子のキャラクターがとてもいいですね。弓子の友達のよっちゃん、
よっちゃんの想い人の宮藤君、宮藤君の友達の蓮田君、そして弓子の見届け人の
Q。キャラクターそれぞれに個性があって良かったです。吸血鬼仲間の佐久に
関しては、いい人だったり悪い人だったり、印象がブレまくりでしたけど^^;
弓子たちがダブルデート(中身は微妙に違いますが)、と称して遊びに行った海
から帰る時のバスで遭遇した奇禍以降、物語は怒涛の展開へ。
後半は、弓子のQに対する強い想いにぐっと来ました。最初はあんなに嫌っていた
のにねぇ。個人的には、Qに海を見せてあげた時に、Q自身も弓子に対する想いが
変わったのではないかなぁと思ったのですが・・・。長年孤独にさらされて、
暗黒の日々を送っていたQが、Qになってから初めて見れた美しい景色だったの
ではないかなぁ、と。ぐっと来るシーンでした。
佐久と共にクボーに行く後半は、なかなか緊迫した場面が続き、手に汗握る
展開でした。Qの正体も明かされて、胸に迫るものがありましたね。
Qがどうなってしまうのか、最後までハラハラさせられました。ラストは胸が
温かくなりましたね。そして、あのエピローグ。これは、続編を想定している
のだろうなぁと思わせるものでした。弓子がQと再会出来る日は来るのか?
よっちゃんの恋は順調に進むのか?
ぜひ書いて頂きたいですね。
万城目さんらしい、破天荒で風変わりな吸血鬼物語でした。青春小説としても
秀逸な作品なので、若い方にオススメしたいですね。面白かったです。