ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

道尾秀介「いけないⅡ」(文藝春秋)

我らがミッチー、最新作。ラストに挿入されてる写真画像がオチになっている

作品ばかりを集めた短編集第二弾。いやー、前作よりもかなりひねりを加えた

写真ばかりで、一回見ただけですんなりオチが理解出来たのは一作くらいしか

なかったです。っていうか、これはもう、私が単にアホってだけの話かも

しれないんですけどね。すぐにああ、こういうことか!ってわかる人ってどれ位

いるのかな?みんなすぐにわかるものなのかなぁ。アホな私は、最初見ただけじゃ

全然どういう意味かわからなくって、写真見て何度か本文に戻って伏線っぽかった

部分読み返して、また写真見て・・・を繰り返して、やっとこういうことなのか

な・・・?って理解するって感じでした。自分の理解力のなさに呆れ果てました

けどね。っていうか、まだ完全に理解しているのかわからない作品もあったりする

んですけどね・・・ネタバレサイトで確認しなくては。前作のときはもうちょっと

わかりやすかった気がするんだけどな・・・と思いつつ、自分の過去記事読み

返してみたら、前作でもやっぱり一発でわかったのはほとんどなかったもよう(笑)。

読者にちゃんと考えさせるように書かれているってことなんでしょうねぇ。しかも、

前作では、道尾さんによる一言ヒントがあったのに、今回はそれも全くなし。前回

の作品を読んでいるのだから、これくらいヒントなしでもわかるでしょ!?って

感じなのかなぁ。えーん、全然わかんなかったよぅ。ミッチーのいけずぅ(涙)。

ただ、次の作品に、その前の作品のネタバレ的な文章が出て来るんですね。だから、

それ読めば前の話のオチもだいたいわかるようになっている。そこで答え合わせ、

みたいな感じなのかな。オチわかんなかった?でも、ちゃんと答えは次の作品に

書いてあるからね、みたいなね。だから、絶対収録順に読まないとダメですけどね。

一作目とは、舞台になる町が違いますが、微妙なリンクはあります。一作目に

隈島って刑事が出て来るんで、あれ、あの隈島さん?もしかして、時系列が

遡ってる?と思ったりもしたんですが、こっちに出て来るのは例の隈島さんの弟

でした。あちらのネタバレもちらっと出て来るので、シリーズも順番に読んだ方が

良いでしょうね。いろいろ惑わされましたが、やっぱり細かい伏線の張り方は

さすがでした。ラスト一編のオチも効いてて、巧いなぁと感心させられました(

こちらのオチも、しばらく考えなければわからなかったですけどね・・・^^;)。

 

では、各作品の感想を。

 

※個人的考察によるネタバレ含みます。ネタバレサイトからの言及も

あります。未読の方はご注意を!!!

 

 

 

 

 

 

 

第一章 『明神の滝に祈ってはいけない』

一年前に失踪した姉を捜す為、桃香は明神の滝にやってきた。滝の観瀑台で出会った

のは、滝の先にある山小屋の管理人の男だった。桃香は姉のことを尋ねてみるが――。

これはいまだにちょっと自分の中で消化しきれてない作品。

大槻が撮った写真の中に『確実に写っていると思っていたもの』についてですが・・・

正直、私は完全に読み違えてました。最初は意味がよくわからなくて、ラストの

写真を見て、桃香自身のこと?と思ったのですが・・・(幽霊だったのかと。アホ

過ぎる・・・(呆))。ネタバレサイトを読んだら、全く違うことが書いてあって

愕然。何を読んでいたんだ、自分^^;;

冒頭の写真も、良く手の部分を見てみると、アレがないんですね。言われなきゃ、

こんなの気づかないよぉ~~~(泣)。あと、ラストの写真に関しては、本文中に

何度か出て来た干支だるまの干支が鍵になっているそうで。そこまで見てなかった

(おい)。しかし、ネタバレ読んでも、いまいち理解しきってない自分って一体。

ミステリ好きって言うのやめようかな^^;

 

第二章『首なし男を助けてはいけない』

真は、祭の日、友達のヨッチとハタケと共に、いつも嘘ばかり吐くタニユウを

こらしめる為、どっきりを仕掛けることにした。その為に、引きこもりの伯父

さんの家を訪ねることに。伯父さんは、三十年前に水難事故で父親を亡くして

から、なぜか引きこもって奇妙な首吊り人形を作り続けているのだ。その人形を

使って、肝試しの最中にタニユウを嵌めてやろうと画策したのだが、仕掛けに

行く途中で思わぬ事故に遭ってしまい――。

これは一番オチがわかりやすかったですね。ラストの写真の右側に写っているのは、

首吊り人形ではなく――という。伯父さんの後悔に胸が苦しくなりました。

 

第三章『その映像を調べてはいけない』

隈島と戸頃は、息子を殺したと通報のあった老夫婦の家を尋ねた。主人の千木は、

息子の暴力に耐えかねて刺し殺してしまったという。遺体は六黒橋から川に

捨てたというのだが、警察がいくら探しても遺体は見つからない。遺体が見つから

なければ、千木を逮捕することも出来ない為、隈島たちは必死で遺体を探そうと

するが、どうしても見つからない。そんな中、隈島は、千木が乗っていた車の

ドライブレコーダーの存在に気づき、映像を確認することに――。

これも、オチの写真の意味が最初全然わからなくて。陶器市に行った話は出て

来たけど、コスモス畑に行ったなんて情報出て来たっけ?と何度も本文を確認して

しまいました。問題はこの場所じゃなくて、コスモスという花自体にあったん

ですね。遺体の隠し場所は、最後の話読むまで完全に勘違いしていました。

白い花に完全に惑わされた。さりげなくミスリードさせるように、もう一種類の

花を効果的に描写する辺りが非常に巧いですね。

でもさ、こんな写真持ってこられたら、勘違いもすると思うけどなぁ。道尾さん、

人が悪いよー^^;

 

第四章『祈りの声を繋いではいけない』

智恵子は、鶴麗山の明神の滝にやってきた。すると、観瀑台の上で、祈りを捧げる

少年に出会う。祈る少年を見て、智恵子自身も祈りを捧げた。どんな形でもいいから、

すべてが終わらせて欲しいと――。一方、警察は千木の息子の遺体を見つける為、

未だ夜目ケ森を捜していた。すると、一体の遺体が発見されて――。

ラストの写真見て、最初意味がわからなかったんですよね。でも、しばらく考えて、

本文に何度か戻って重要そうな部分読み返して、ああ、そういうことか、と。

桃香たちの両親が、桃香の携帯番号引き継いでたまに鳴らしてるって描写がポイント

ですよね。あの場面で両親のどちらかが緋里花の携帯を鳴らしたことで、すべてが

明るみに出るってことですよね。前に出て来た伏線なんか全然覚えてないから、

頭の中『?』だらけになりましたよ、もう^^;

一章で見つからなかった緋里花はどうなったのか、三章でそもそも、なぜ夫婦は

あんなことまでして息子の遺体を隠したかったのか、腑に落ちない箇所がいくつか

あって消化不良だった部分が、ほぼすべて綺麗に説明がついたので、すっきり

しました。

この最終章で祈りを捧げた人物、智恵子、真、隈島それぞれの祈りはすべて叶えられた

形になりました。どんな形でもいいからすべてを終わらせたかった智恵子の祈り、

再びしゃべれるようになりたいと願った真の祈り、自分の手で事件を解決したいと

願った隈島の祈り。それはとても皮肉な形で叶うことになりましたが。それぞれの

祈りの声を繋げてしまったことで、救いのない結末が明るみにでることになった、と。

細かい部分までよく考えられているなぁと脱帽でした。タイトルもきちんと効いて

いますね。

欲を言えば、ネタバレサイト見ないでちゃんとからくりを理解したかったですが

・・・^^;決定的に読み取り能力が欠けている私にはこれが限界でした。

作品的には徹底的に救いがないですが、ミステリとしてはさすがの面白さでした。