ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

似鳥鶏「小説の小説」(角川書店)

メタ・フィクション小説ばかりを集めた作品集。既存のいわゆる『小説の決まりごと』

を取っ払った、常識無用の小説ばかりが収録されています。

いやぁ~・・・う、うん・・・正直、読むのに疲れました。アマゾンのレビュー

はみなさん大絶賛だったので、アレなんですけどね。

私的には、こういう小説はあんまり面白いって思えなかったなぁ。試み自体は、

面白いと思いますよ?作者も、編集者も、校正の人も、そりゃー、大変な労力

をかけて出版されたことはもう、読めば疑いようのないところで。よくもまぁ、

こんな面倒なことにチャレンジしたよなぁと呆れるやら、感心するやら。

ただ、そのチャレンジ精神はすごいと思うものの、肝心の作品の内容が全く

頭に入って来なくって。ただただ、字面を追うので精一杯になってしまい、

ストーリー自体を楽しむことが出来ませんでした。まぁ、ストーリーっていうのも、

あってないような、あるけどそんなに重要視されてないような・・・って感じ

ではあるんですけどね。

一作読むごとに、残りのページを眺めては、ため息をつくような読書になって

しまいました。てか、よく挫折しなかったよな・・・最後はもう、意地で読んでた

ような^^;

 

では、一応各作品の感想めいた愚痴をば。

『立体的な藪』

殺人事件の真相が、語る人ごとにどんどんひっくり返って行く話。終盤、ルビで

真相を語り始めた時は、ルビ部分読むのが本当にしんどかったです。ルビを

文章にするなーっ。老眼始まってる人間には辛いんじゃっ。最後の最後に○○

(漢字二字)で明かされた真相には誰もが脱力し、ツッコミを入れることでしょう。

ただ、今思えば、一応(体裁だけは)本格ミステリっぽいこの作品が一番楽しめた

かもしれない。

 

『文化が違う』

読んでて一番ツラかったのがコレ。そもそもSFとかファンタジーとか苦手だし。

高校生男子が車に轢かれ、なぜか異世界に飛ばされてしまう話。しかし、その

飛ばされた異世界は、特別な言語が使用されており、主人公は度々日本語の常識を

覆される場面に遭遇してしまう、という。その言語の部分を抜かせば、ロール

プレイングゲームの世界のような感じなんですけどね。日本語ではかなりお下品で

お下劣な言葉があちらでは良い意味で使われていたりする訳で、想像すると

かなり・・・気持ち悪っ。早く読み終わらないかなぁってずっと思いながらページ

めくってました・・・(しかも、四作の中では一番長いっていうね)。終盤に出て

来る、異世界側での一番のご馳走を食べるシーンが一番酷かった。もう読みたくない。

ヒロインの名前もひどいもんね・・・○ンコナゲル・・・。

 

『無小説』

既存の小説の引用だけで作成された小説。ただただ、著者の労力に脱帽。

小説の内容自体はあまりよく覚えていない。終盤のページはすべての言葉に

脚注が・・・。そして、最後は脚注だけのページで終わるっていうね。

ひとつも自分で文章考えなくても、引用だけで小説が書けるってことを証明

したかったもよう。『ダメ、コピペ!』を根本から覆す作品。

 

『日本最後の小説』

政府が決めた改憲によって、表現の自由がどんどん奪われて行く中、小説家と

編集者が最後の最後までそれに抗い、小説を発表しようとするお話。

これは現実に起きないとも限らないようなお話で、終盤の展開はぞっとしました。

似鳥さんって、こういう、やたらと全国スケールに悪が広がって行くお話好きです

よね。どっかの国を彷彿とさせますね(RとかCとか)。って、ブログでこういう

言葉を書くことすら弾圧される世の中になったたらと思うと・・・(怖)。

舞台は日本だけど、なぜか登場人物が鳥。いろんな鳥の名前が出て来て、鳥好き

には楽しめま・・・せんでした(は?)。似鳥さんは鳥好きなのかな(PNからも

伺えますけども)。最後の最後まで読者に小説を届けようとした渦良(うずら

の心意気には感動したものの、最後の作品は小説って言っていいの?って思いました。

言論弾圧、コワイ。

 

ちなみに、カバーの部分にも掌編が載っています。SIDE-AとSIDE-Bがありまして、

同じような設定なのですが、語り手が違うだけで読み心地が全く違っているので、

読み比べると面白い。片方は猟奇的で気持ち悪いだけだけど、もう片方は勇敢で

愛情深いヒーローに思える。言葉って面白いですね。

 

まぁ、変わった小説が読みたいって思われた方は、ぜひチャレンジしてみて

頂きたいです。私自身は、メタものは、しばらくもういいや・・・(げんなり)。