シリーズ第六弾。早いですね~。前作でコロナの世界が始まりましたが、本書
では、まさにコロナ禍真っ只中。政府による緊急事態宣言が出されて、不要不急の
外出が出来なくなった頃の出来事です。大学では対面授業がなくなり、アルバイト
も出来ず、身内としか会えない日々を過ごす百花。記念館の閉館イベントも中止
になり、先が見えなくなってしまう。そんな中で、四年生になった百花は、
リモートで卒論と就活に取り組むことに。慣れないリモート環境で戸惑いながらも、
少しづつ前に進んで行こうと奮闘するが。
読んでいて、3年前の緊急事態宣言が出た頃の世の中のことを思い出しました。
あの時は、本当にこのコロナがいつ終わるのかわからず、常に途方に暮れていた
覚えがあります。毎日感染者数に一喜一憂して、不安にかられていた。もし身内で
感染者が出たら。自分が感染したら(その後まんまと感染しましたけど^^;;)。
どこで感染するかわからないから、ずっと感染対策に気が抜けないし、毎朝
体温計るのも怖かった(もし、熱が出ていたらと・・・)。毎日ずっと怯えて過ごして
いた気がします。本書の百花は、まさにそんな時に大学四年生を迎えます。授業も
卒論指導も就活も、すべてリモートになってしまいます。百花の不安で揺れ動く
心情が伝わってきて、胸が痛かったです。それでも、少しづつこのコロナの世界に
向き合って前を向こうとする姿に胸を打たれました。卒論の合間に、息抜きと
称して箱作りを始めてしまうところには大丈夫かと心配になりましたが^^;
しかも、一度始めたら没頭してしまう質だから、何時間もかけちゃうし。百花は
本当に物づくりが好きなんだなーと微笑ましかったですけどね。こういう物づくり
のセンスがあるって本当に羨ましい。ゼミの先生に贈った水引を使ったアルバム箱、
本物を見てみたくなりました。きっと美しいんだろうなぁ。
就活に関しては、ハラハラさせられましたが、百花の和紙への熱い思いが相手に
伝わった結果だと思う。まぁ、彼女の頑張りは、藤崎さんとか薫子さんから
伝わっていたのだろうけれども。百花のような人材を取らないで、誰を取るんだ
って感じですよ。コロナ禍の辛い中、就活も卒論も、百花は本当に頑張ったと思う。
そうやって頑張ったことが、今後の活動に必ず生きて来るはずです。その証拠に、
水面下で動いていた藤崎さんが、ふじさき記念館再建の糸口を掴んでくれていた。
新しい記念館の場所は、思った通りの所になりました。最初藤崎さんが提案して
いた押上も良かったのだろうけど、最終的に決まった場所は、それ以上に相応しい。
何より、ほしおワールドならもう、ここしかないですもんね。他シリーズとの
リンクも、今まで以上に出て来そうです。こうやって、ほしおさんの世界は
繋がって行くんでしょうね。
先の見えない不安に何度も押しつぶされそうになる百花に、もう少し頑張れば、
きっと明るい未来が見えるから、と言ってあげたくなりました。百花の不安は、
3年前の自分とほとんど同じだったから。あの頃は、一生これが続くような気
さえしていた。物事には始まりがあれば、必ず終わりがあるものなんですよね。
今こうしてほぼ以前の日常が戻って来たからこそ、言えることなんですけれどね。