大崎さん新刊。シングルファザーの父親と二人暮らしだった中学二年の花南子は、
父親の海外転勤に伴い、春休みから曾祖母の営むアパート「さつきハイツ」の一室
で一人暮らしを始めた。しかし、何かと便りにしていた曾祖母の五月さんが、
ぎっくり腰で入院することになってしまった。五月さんがいない間、本当に一人
で暮らすことになってしまった花南子が、五月さんの住む101号室でくつろいで
いると、郵便受けに何かが入れられる音がした。確認すると茶封筒が入っていた。
封もされていないそれを何気なく開けてみると、ある人物に関する調査結果が
書かれていた。一体これは何なのか。花南子は、さつきハイツの近くに住む、
同じ片親家庭で同じ料理部所属の隣のクラスの男子・根尾新太に、ことの次第を
打ち明けた。すると、根尾からも意外な情報がもたらされ、謎が深まって行く。
二人は、この謎を解き明かす為、調査を開始する。そんな二人の前に現れたのは、
さつきハイツの二階に住む『名探偵』だった――。
調査会社に勤める調査員の今津を、中学生の二人が『名探偵』だと持ち上げて、
異様に慕うのがちょっと違和感あったんですよね。何度か事件を解決した後なら
まだわかるのですが、一話目で知り合った直後から、やたらと懐いていたから。
しかも、当の今津は、自分を慕う中学生たちに対して塩対応ばかりしていたのに。
彼らが出会うそれぞれの事件も、なんだかまわりくどいというか、説明がわかり
づらくて、ちょっと入っていけなかったりしました。中学生二人が、春休みに
出会う事件を通して成長していくところは良かったと思うのですが。片親同士、
他の人には言えないことも言い合える二人の友情関係も良かったですしね。
※以下、ネタバレ含みます。
未読の方はご注意下さい。
正直、最終話の最後を読むまでは、謎解き部分もさほど感心した要素もなく、
名探偵だという今津のキャラもいまいち掴みどころがなく、あまり好感も持てない
しで、なんだかなぁって感じの感想だったんですが・・・最後の最後で、ある人物
に関して、驚きの事実が。えぇーっ、そういうことだったのーーー!って感じでした。
腑に落ちない部分がなくもないですが・・・でも、その事実を踏まえて改めて
前に戻ると、なるほど、と納得出来る部分もあって。花南子が、その事実を
これからどう自分の中で折り合いをつけていくのか、そこは気になるところです
が・・・。
花南子があれほど今津を慕った理由も、この事実を踏まえれば納得出来るものが
あるのかなと(根尾は、もともと『探偵』に憧れがあったから納得出来るものが
あったんですけどね)。どこか、本能で感じるものがあったのかもしれないですね。
最近の世間の風潮からすると、こういう展開もありなのかなぁとは思いますね。
ラスト、根尾に対する花南子の思いが少し変化したところが嬉しかったです。
それが恋愛に変わるかどうかは、今後の二人の付き合い次第になりそうかな。