ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

深水黎一郎「真贋」(星海社FICTIONS)」

深水さん最新作。久しぶりに芸術探偵シリーズの新作が出て嬉しいです。といっても、

今回は瞬一郎は出て来るものの、海埜警部補は登場せず、違う主人公が活躍する

新シリーズという位置づけになりそうです。

主人公は、美術関連の犯罪を取り扱う為に警視庁に新設された『美術犯罪課』に

突如課長代理として抜擢された森越歩未。唯一の部下である馬原茜とともに、

二〇社近い関連企業を持つ一大コンツェルン・鷲ノ宮グループが持つ名画コレクション

の巨額脱税疑惑の捜査を命じられる。時価数百億とも言われていた名画コレクション

だが、最近改めて有名な美術評論家によって鑑定してもらった結果が、『すべての名画

が贋作』というものだった。いつの間にか名画が贋作にすり替わっていた?それとも、

これは先代が亡くなった後、鷲ノ宮家を継いだ長男の公晴氏による相続税逃れの

陰謀なのか――。捜査に乗り出した二人の前に新たに持ち上がったのは、公晴氏

の妻・時乃夫人の若かりし頃を描いた絵が、いつの間にか『現在の年老いた時乃夫人』

の絵にすり替わっていたという不可解な謎。歩未たちは、美術に造詣が深い庁外

アドバイザーの神泉寺瞬一郎と共に、この謎に挑むことに。

面白かったです。本物だった筈の名画コレクションが、厳重な保管環境にあったにも

関わらず、いつの間にかすべて贋作にすり替わっていた謎と、若い女性を描いた

作品が、年老いた女性を描いた絵に変わっていた謎。どちらの真相も、なるほど、

と思えるものでした。絵が年を取った謎の方は、途中で伏線らしきエピソードが

出て来て、多分これが伏線なんだろうなーと当たりをつけていたので、ほぼ

方法も犯人(というと微妙に語弊がありそうですが^^;)も予想通りでは

あったのですが。鷲ノ宮コレクションの贋作事件の犯人の方は、全く予想外の人物

で驚かされました。

ミステリとしての面白さももちろん楽しめたのですが、それ以上に、絵画の贋作

に関する蘊蓄の部分が興味深かった。歴代の名画は、必ずといっていいくらい、

天才的な贋作師によって贋作が描かれて来たんだなぁと驚かされました。本物と

ほぼ見分けがつかないくらいの腕前だったら、贋作なんか描かずに、自分の絵を

描けばいいのに・・・というのは、誰もが持つ感想のようです。でも、無名の

自分の絵を売ったところで二束三文ですからね。結局、贋作師としての腕を

磨くよりなかったのかもしれません。

美術鑑定技術の進歩によって、現在はほぼ贋作かどうか判断できるみたいです

けどね。当時は、X線とか分析機なんてものはなかったですからねぇ・・・。

瞬一郎が、自前の蛍光エックス線分析装置を持ってたところには目が点になり

ました。何者なんだ^^;

女性二人と瞬一郎の関係も良かったですね。特に、馬原さんのキャラが立っていて

良かったな。見た目と口調がいまいち一致しない印象はありましたけど・・・

なんであんな体育会系の口調とノリなんだか^^;

最後、時乃像の真相を時乃さん本人に告げるかどうかで女性二人と瞬一郎の意見が

分かれるのですが・・・うーん。どちらの言い分もわかるけど、個人的にはやっぱり

女性側の意見よりかなぁ。私だったら、真相を知らないままでいるよりは、知りたい

かなぁと思う。それがどんなに辛い真相だろうが、真実を知りたいですもん。

 

今までとは版元も違うから、心機一転、新シリーズ始動って感じなのかな。

今後は、美術犯罪課の二人+瞬一郎のトリオでシリーズが展開していくのかしらん。

でも、やっぱり海埜警部補がいないのは寂しいな。瞬一郎とオジさんの関係好き

だから。

そっちはそっちでまた新作書いて欲しいなぁ(ついでに、おーべしみも登場して

ほしいw)。

 

余談ですが、この作品読んだ直後に、現実に徳島県の美術館が六千万以上で

落札した絵画が贋作だったかもしれない、というニュースが飛び込んで来て

びっくり。しかも、その贋作が有名なドイツの天才贋作師が描いた作品かもしれ

ないらしく。鑑定書はついてるらしいですが、真相を見極めるべく、調査中だとか。

作品との絶妙なシンクロに面食らわされたのでした。