ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

京極夏彦「了巷説百物語」(角川書店)

ああ~~~、終わってしまった。大好きな大好きな巷説シリーズ。タイトル通り、

これで完結だそう。いやぁ、図書館で本を受け取った時の衝撃はなかったわ。

 

分厚っ。総ページ数1149ページ。

 

巷説シリーズの中でも、一番の分厚さじゃないかな?800ページくらいなら

驚かないけど、さすがに千ページ超えだとね。迫力満点(笑)。去年出た、『鵺の碑』

の単行本も同じくらいあったのかな?私が読んだノベルス版は、千ページなかった

のですが。

若干、読み切れるかという不安は覚えたけれども。だって、一日100ページ

読んでも、11日じゃ読み切れないんだよ?最近、一日100ページ読める時間

自体が、なかなか取れなかったりする状況なので・・・。まぁ、でも、読み初めたら、

そんなの杞憂でしたね。だって、面白いし、京極さんの文章読みやすいから、

すいすいページが進む、進む。ただ、重さだけは、いかんともしがたく。職場に

重くて持ってけないから、ほとんど家だけで読みました(一日だけ持って行った

けど・・・重かった^^;)。ちょっと読んだら、体勢変えて、いろんな格好

で読んでました(同じ体勢で読むのがキツイw)。まぁでも、なんだかんだで

7,8日はかかりましたかね。後半は一気に行けましたけどね。

前置き長くてすみません^^;

さて、肝心の内容ですが。最終巻なのに、主人公は又市さんではありません。

本書で語り手を務めるのは、狐狩りの名手・稲荷藤兵衛。シリーズのどこかに

登場してたのかちょっとわからないのだけど、一応初登場かと思われます。

藤兵衛の本業は狐を狩ることですが、実は洞観屋という、その鋭い目で、嘘や

まやかしを見破るもう一つの顔も持っています。どんな嘘も藤兵衛にかかると

たちまち見破ってしまう。その特殊能力を頼りにして、様々な人物が藤兵衛に

洞観屋の仕事を依頼してきます。藤兵衛の仕事ぶりが優秀であるが故に、彼は

江戸に忍び寄る大きな陰謀に巻き込まれて行く――という感じ。そこにどう又市

一味たちが関わって行くのか、それはぜひ読んで確かめて頂きたいところです。

まぁ、ひとつ言えるのは、今までのシリーズ全部最初から読み返したいっっっ!!

って思うような内容だったってことですね。あと、『数えずの井戸』『覘き小平次

辺りも関わってきますし、もちろん、百鬼夜行シリーズとも繋がっています。

そもそも、今回藤兵衛と並んでメインキャラとなる中禪寺洲齋は、名前からも

わかる通り、百鬼夜行シリーズの京極堂こと中禅寺秋彦の祖先。はっきりどういう

関係なのか(祖父なのか曽祖父なのか・・・??)はわからなかったけど(どこかに

情報があるかもしれませんが)、間違いなく同じ血が流れていると思われるキャラ

クターでした。憑き物落としの仕方も似てますし。京極堂より穏やかな性格って

感じはしましたが。拾われっ子の寿々に対する優しい愛情にぐっと来ました。

それだけに・・・あの展開は辛かったなぁ・・・。

とにかく、今まで出て来たいろんな要素が、全部ここに集結しているような感じで、

京極さんの作品を長年追いかけて来たファンにとっては、ここであの人!こんな

ところにあの人!みたいに、お馴染みのキャラたちがあちこちで登場して、読み

所がいっぱい。西の靄船の林蔵さんも活躍しますし。でも、オールキャスト

だからこそ、終盤は・・・もう、涙なしでは読めない怒涛の展開になって行きます。

洲齋を中心に、福乃屋の屋敷に乗り込んでからは、息をのむようなシーンの連続。

痛くて、辛くて、悲しい。みんな満身創痍。どうしてこんなに無益な血が流れなきゃ

いけないのかと、悲しくなりました。

でも、一番涙腺崩壊したのは、事触れの治平が洲齋のために、あるものを手に入れた

時のシーン。いやもう、これは読むのが辛すぎて。治平どこまでいいやつなんだよ。

治平の為に、洲齋が優しい嘘をつくところも。胸が痛くて仕方なかったです。

藤兵衛の洞観屋の能力もすごかったです。こういう人は、絶対敵には回したく

ないですね。一人で生きてきた藤兵衛が、お登代さんと彼女の子を匿って一緒に

暮らしているうちに、誰かと暮らすことの温かみを感じて行くところにぐっと

来ましたね。

まぁ、とにかく、集大成ということで、読みどころはいっぱいです。ただ、この

シリーズらしい、又市一味による小気味の良い仕掛けが出て来るようなお話では

ないので、本来のこのシリーズの持ち味があまり感じられなかったのは少し残念

でしたけれども。そもそも、その又市さんがね~・・・名前だけはめちゃくちゃ

出て来るんですけどね。一体、どこで何してるの!?って状態がずっと続くので。

又市ファンとしては、いつ出て来るのか、ずっとやきもきしてましたが。

・・・いやはや、まさかの登場でした^^;

ページ数的には長かったですが、読み始めたらもう、どっぷりこの世界観に浸って

堪能できました。

さすがの完成度でしたね。これで終わりとは寂しい限り。でも、又市さんや

本書で出て来た藤兵衛さんも、京極さんのお話は繋がっているから、きっとまた

どこかで会えるはずと信じたい。

それに、歌舞伎とのコラボで今度出る新作は、本書に出て来た中禪寺洲齋が活躍

するお話なのだとか。そちらも楽しみです。