ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青柳碧人「怪談刑事」(実業之日本社)

青柳さん最新作。タイトルは怪談刑事ですが、主人公は、怪談話など大嫌いな超

現実派のベテラン刑事の只倉恵三。定年まであと少し、このまま所轄署の一刑事として

働けると思っていたのだが、なぜか突然、怪奇現象等の不可思議な未解決事件を

再調査する警察庁内の『第二種未解決事件整理係』、通称『呪われ係』に転属を

命じられた。組織に所属している以上従う他はないが、内心では納得がいかない

まま新しい部署に行くことになった。新部署に行ってすぐに新しい上司の牛斧から

渡されたのは、過去に群馬県のある集落で起きた奇怪な未解決事件のファイル。

死んでいる筈の男がやってきて、同じ話を繰り返したという不可解な事件――

腑に落ちないままファイルを持って自宅に帰った只倉の前に現れたのは、娘の

彼氏だという怪談師の関内炎月という男。炎月は、只倉が持って帰った怪談

めいた事件のファイルを読んで、『お義父さん、どうか私にこのお話をください!』

と迫って来た。炎月は、この怪談話を自身が出演するイベントで話すネタにしたい

と言うのだ。こんな男が娘の彼氏だとは認めたくない只倉は、事件を再調査して、

現実的に解決して見せる、と意気込むのだったが――。

怪談話など大嫌いな刑事 V.S 怪談を生業とする怪談師 というキャラ設定が

面白かったですね。ホラーめいた未解決事件を、幽霊や怪談など大嫌いな刑事の只倉が

再調査によって現実的に解明して行くも、ラストではホラーとしか思えない不可解な

オチで締める、というミステリ✕ホラーがうまく融合している構成になっています。

まぁ、何か既視感のある設定といえなくもないのですが・・・(^^;)、でも、

一見不可思議に思える現象を現実的な論理で論破して行くところは面白かったです。

只倉と炎月のコミカルなやり取りも楽しかったですし。娘の彼氏(しかもわけの

わからない怪談師という職業)を目の敵にする只倉は、怪談なんでこの世に存在

しない、という信念のもと、事件の真相解明に意欲を燃やします。何か、事件

解決のモチベーションの方向が間違っている気がしなくもなかったですが(笑)。

ミステリ部分も良く出来ていたと思います。まぁ、ところどころツッコミたく

なる要素もありましたけど。5話目の仏像が出て来る話は一番感心したかな。

仏像が出て来る怪談がいっぱい出て来ますが、最後にそれが全部繋がって行く

ところがお見事でしたね。まぁ、若干繋がり過ぎてて、ちょっとご都合主義的に

感じなくもなかったですが。

頑なに炎月を拒絶していた只倉でしたが、付き合いが続くうちに、最後にはなんと

炎月への態度が軟化している雰囲気がなくもなかったような(只倉は認めないと

思うけどw)。なんだかんだで、悪い奴ではないと気づき初めているのかも。

まぁ、溺愛する娘が彼氏だと連れて来た男が、怪談師なんていう得体のしれない職業

の男だったら、そりゃ大抵の親は反対するでしょうねぇ・・・(苦笑)。どちらかと

言うと娘の方が炎月のファンでぞっこんみたいだし(6話目で一時期、理由あって

別れの危機を迎えたけれど)、多分、只倉の気苦労はこれからも続くのでしょうね。