奈良県ゆかりの作家四人による、城崎温泉をテーマにしたアンソロジー(多分?)。
寄稿作品が全部同じタイトル(『城崎にて』)のアンソロジーというのも面白い
試みですね。
志賀直哉の『城崎にて』を読んだことがない為、それぞれの作品との比較は出来
かねたのですが、多分内容的には全く重複していないと思われます。もちろん、
当該作品へのリスペクトはそれぞれにあると思うのですが。発端は、本書に寄稿
している四人の奈良ゆかりの作家さん(森見登美彦・円居挽・あをにまる・草香
去来(敬称略))が、とある焼き鳥屋に集まって話をしていた時に、森見さんの
何げない一言から城崎温泉に行こうという話になり、実際に四人で楽しく旅行して
きたそう。その旅があまりにも楽しかったので、その旅の思い出を本に残そう
ということになり、この作品が生まれたのだそう。
それぞれに味わい深い物語になっているのではないかな。私も、城崎温泉に行って
カニ尽くしを味わいたい!と思いましたねぇ。城崎ってそんなにカニが有名
なんですかね。城崎温泉は兵庫県にあるらしい。兵庫県といえば、かねてから
有馬温泉に行ってみたいと思っていたけど、城崎温泉も良さそうですねぇ。
カニ三昧、温泉三昧・・・ああ、行きたいぃぃぃ~~~。
では、各作品の感想を。
あおにまる『城崎にて』
これは城崎バージョンの、『注文の多い料理店』ですね。職場の先輩と二人で
城崎温泉に行く途中、猛吹雪の中道に迷ってしまう。すると、突然目の前に
豪華な温泉旅館が現れ、オープン十周年の為、無料で宿泊できるというメッセージが。
二人は嬉々として宿泊するが、その代わりコロナ対策なのか、宿泊客に対して奇妙な
注文が次々とつけられるのだが――。
最初の方に出て来た子猿が何らかの伏線になっていると思っていたので、オチは
なんとなく予想出来ましたね。良いことはしておくものですね。
円居挽『城崎にて』
大学の生協のPR誌『さーどあい』の編集部員たちが合宿の為、城崎温泉にやってきた。
この合宿で、元編集長から、次の編集長の指名が行われるらしい。わたしは、何と
してでも、他の編集部員たちを押しのけて編集長になりたい。すると、元編集長
からある条件をクリアしたものが次の編集長だと言われて――。
主人公の襟沢が、なんとしてでも編集長になりたかった理由にぐっと来ました。
他人を蹴落としてでも編集長になりたいと言う襟沢の傲慢な態度にイラッとして
いたのですが、理由を知って彼女のイメージがガラッと変わりましたし、最後
ほっこりしました。
草香去来『城崎にて』
二十八歳で無職の大輔は、父方のおじから、城崎の知り合いのところで仕事を
しないかと誘われる。このおじは、何度も借金を踏み倒したりして親戚中から
総すかんを食らっているダメ人間な為、ハナハダ怪しい話だとは思ったものの、
何らかの仕事はしなきゃいけないと焦燥に駆られていた大輔は、引き受けることに。
しかし、その仕事は案の定、しょうもない仕事だった――。
大輔が生真面目にパンダを演じるところが可笑しかったです。どう考えても採算
取れなそうな運営方法だったので、ああいう結果になるのは当然でしょうね^^;
森見登美彦『城崎にて』
温泉小説家の四人が集まって、城崎温泉のホテルに泊まっていた。美味しいカニの
フルコースを堪能した後、何かのきっかけから、四人でこっくりさんをやることに
なった。四人でこっくりさんに質問を始めると、こっくりさんが『志賀直哉』で
あることが判明し――。
ちょっぴりホラーのような、ファンタジーのような、なんとも言えない味わいのある
お話でした。温泉小説家っていうジャンル分けは面白いですね(笑)。温泉を題材に
した小説書いたら、みんな温泉小説家になるのかな?^^;