シリーズ第5弾。主人公の一葉が連句を初めて、早いものでもう三年目。連句を
始めたおかげで新しい職も得ることが出来たし、いろんな人との繋がりも出来た。
すっかり連句が生活の一部になっている一葉に、新たな出会いが――。
今回は、前作に出て来た連句の大会で知り合った『きりん座』の人々との交流が
描かれます。お互いの連句会に参加し合って、それぞれの会の特色の違いなどを
肌で感じることになります。一緒に巻く(連句を作ることを巻くと表現します)人
が違えば、会の雰囲気もそりゃ変わりますよね。いろんな人と交流して、いろんな
人と連句を巻くことによって、より連句への理解を深めることになる。今回一葉
が交流した『きりん座』は、若い人中心に結成されている会。確かに、一葉が
参加している『ひとつばたご』とは言葉のチョイスなどが違うなぁという感じ。
まぁ、『ひとつばたご』にもたまに参加する高校生はいるのだけど。ただ、三年生
なので、受験でなかなか参加出来ない状況だし、他のメンバーは比較的一葉よりも
年齢が上の人が多いから、『きりん座』よりもずいぶん落ち着いた印象があります
ね。連句に慣れた人も多いしね。でも、一部の常連メンバーが、SNSがきっかけで
参加するようになった、というのに少し驚きました。今は、こういうツールが
あるから、何かを始めたいと思った時に便利ですね。私自身はSNS系を全くやって
いないから、もし何かやりたいと思ったとしても、違う方法にならざるを得ない
でしょうけども(苦笑)。
一葉の連句も、ずいぶん熟れたものになって来たような感じがしますね。個人的
には、こういう創作モノは全くダメなので、こうやって自分の言いたいことを短い
言葉で端的に表現できる人は本当にすごいと思ってしまいます。俳句とか短歌も
そうですけど。俳句とか連句とか、日本人ならではの言語表現だなぁと思いますね。
古から、日本人は自分たちの言語を大事にしてきたのでしょうね。
しかし、連句のルールは、何度説明されてもいまいち把握出来ない。自分でやって
みるとまた違うのかもしれないですが。めちゃくちゃ細かい決まり事があるので、
しっかりルールを把握している人がいないと、ただ言葉がつながるだけになって
しまいそう。みんなで巻いた作品を通して読むと、それぞれに違う人が作って
いるのに、ちゃんと繋がりというか、まとまりのある作品になっているから
不思議。言葉が繋がって行くことで、作った人の思いも繋がって行く。出来上がった
作品を通して読むと、一句ごとに読んだ時とは全然違う感動がある。ほんとに、
奥が深いなぁと感心させられますね。もちろん、捌き(みんなから出された句の中で、
どの句を採用するか選ぶ人)の技量も必要ですよね。そういう意味では、『ひとつ
ばたご』でいつも捌きを担当している主宰の航人さんの捌きは、いつも見事
だなぁと思いますね。
今回、一葉は『きりん座』の人たちと交流する訳ですが、その中に、大学の時の
想い人に似ている人がいて、その人の面影に心が揺れ動くことになります。
確か、前にもその人のことはちらっと出て来たような気もしますが・・・ただ、
思わぬ情報が一葉にもたらされて、その恋心は苦い結末を迎えるのですが・・・。
でも、大学時代の片思いの残滓に決着をつけたことが、新たな恋に向かうきっかけに
なるのかも、と思いました。『きりん座』の大輔さんとは、このまま交流が続けば、
今後良い関係になって行きそうな気が。最初は、奥さんと別れた航人さんが相手に
なったりするのかな、と思ったりもしたのだけど、結構年が離れてそうですしね。
そういう対象ではなさそうかな、と。何より、大輔さんは、一葉を飛び越えて、
写真好きの共通点によって、先に一葉の父親と仲良くなっちゃいましたからねぇ。
これは彼氏としては最強なんじゃない?(笑)ま、今の時点ではその片鱗も
ありませんけどね(単なるオバちゃんの願望w)。
なにせよ、一葉には幸せになってほしいな、と思いますね。
今回も、連句の奥深さと人との繋がりを感じられる素敵な内容でした。