前作がなかなか良かったので、続編が出たと知って嬉しかったです。亡くなった兄
が営む神田神保町の鷹島古書店を引き継いだ珊瑚は、義理の姪の助けもあり、
古書の仕事にも慣れて来た。しかし、古い建物であるがゆえに、古書店の漆喰の
壁の一部に大量のカビが生えていることが判明。大規模修繕が必要になり、工務店
の職人さんに入ってもらうことに。すると、剥がした漆喰の下から、滋郎兄が
書いたと思われる情熱的なメッセージが現れた。これは、誰に当てて書かれた
ものだったのか――。
前作でも少し思ったのだけど、語り手が同じ章の中でもちょいちょい変わるもの
だから、今誰の視点だったっけ、と混乱しがちで、ちょっと読みにくかった。
珊瑚と美希喜で、一応あたしと私、という使い分けはしてあるのだけど・・・。
今回、それに過去の滋郎兄の視点まで挿入されるものだから、さすがにちょっと
視点変わり過ぎでは、と思ってしまった。こういう作品の場合、一人称じゃなくて、
三人称で書けばもっとわかりやすい気がするけどな。まぁ、それぞれの心情を
細やかに描くには、一人称の方が良いんだろうけど。それなら、もう少し読者が
読みやすいように書いてもらいたいなぁ・・・。私がアホなだけかと思ったけど、
読書メーターの他の方のご感想にも結構同じようなこと書かれていたので(自分
だけじゃなかった、とちょっとほっとした^^;)。
珊瑚さんと美希喜の関係が良いなぁと前作で思っていたのだけど、今回は、そう
やって良好な関係を築いていただけに、最後の珊瑚さんの行動には少し身勝手な
ものを感じて、イライラしてしまった。いろいろいっぱいいっぱいだったのかも
しれないけど、こういう行動に出る前に一緒に働いている美希喜に一言くらい
相談するべきだし、行動に出た後のフォローもなさすぎて呆れました。いきなり
一人で古書店を任された美希喜が大変になることくらい、想像すればわかる筈
なのに。その想像力が全く働いてないところに腹が立ちました。もちろん、珊瑚
さんの年齢を考えれば、今行動に移さなければ後悔するっていうのもわかるの
ですが。その前に、やることあるでしょ、大人なんだから!って思ってしまった。
まぁ、なんとか最後は二人で話し合いが出来て良かったですが。鷹島古書店が
入っているビルの権利に関しては、強欲な美希喜の母親の思惑通りになりそうな
ところがなんとなく癪に障る感じはありましたが(苦笑)。まぁ、美希喜の将来
を考えるとね。こういう形が一番良いのでしょうね。
前作の自分の記事読み返してみると、本書の最後に書かれていることが結構
予言されてて、自分でもちょっとびっくりしました(笑)。美希喜の三角関係
の方に関しては、まだちょっとわからない状況ですけどね。健文優勢かと思いきや、
奏人も鷹島古書店でバイトしたいとか言い出すし。どちらも、美希喜の力になりたい
気持ちは伝わって来るので、まだどうなるかわからないですねぇ。奏人の方は、
かなり屈折した愛情表現な感じがしますけどね^^;
滋郎さんの、漆喰の中に込めた、ある人物への熱い想いにはぐっと来ましたね。
当人に、自分へのメッセージだと伝わらなかったことが少し残念ですが。まぁ
名前書く訳にも行かなかっただろうし、書いた時は絶対に外にばれてはいけない
秘めた想いだった訳だから、仕方がないのだけれども。ちょっと、切なかった
ですね。まぁ、その後に想いが成就して良かったですけどね。
さてさて、最後の最後で爆弾投下した珊瑚さんですが。お相手がどういう反応に
なるのか、めちゃくちゃ気になるところで終わりとは。続きが気になる~~~。
図書館本ですが、付録の短編もちゃんと付帯されていて読むことが出来ました。
珊瑚と美希喜、二人でお弁当持ってのんびり桜を眺める姿に、ほんわかした気持ちに
なりました。
ずっとこういう二人の関係が続けば良いと思ったのだけどね。時も人の心も移り
変わるものだから、仕方がないのでしょうね。
今回も、出て来るお料理はどれも美味しそうでした。神保町には美味しそうな
お店がいっぱいで羨ましいなー。