以前から気になっていた作家さんなのですが、人気が多くてなかなか借りられ
なかったので、まだ予約がさほど多くない新作からチャレンジ。
ウーバーイーツならぬ、ビーバーイーツ配達員が手駒になって情報集めをし、それを
探偵役であるゴーストレストラン(客席を持たず、デリバリーのみで料理を提供する
飲食店)のオーナーに伝え、オーナーがその情報をもとに事件の謎解きをする、
いわゆる安楽椅子探偵もの。
舞台は東京の六本木。オーナーはこの世のものとは思えない程の美青年。得体の
知れないこの店にやってきた新人ビーバーイーツ配達員で大学生の僕は、美しい
オーナーに頼まれて、高額のアルバイトに手を出す。その依頼は、依頼人から
頼まれた料理を届けるついでに、ある住所にUSBメモリを届けてほしいというもの。
その報酬は、即金で一万円。怪しいアルバイトなのではないかと訝るが、高額の
報酬につられて引き受けてしまう。これで味をしめた僕は、オーナーからの追加
ミッションを目当てに、この界隈に入り浸るようになった。何度も仕事をこなす
うちに、この店のオーナーは、ゴーストレストランの料理人の裏で、探偵めいた
仕事をしていることに気づいた。依頼人は、特定のオーダーをすることで、『ある
依頼』の意思表示をする。オーダーを受けたら、受注を受けた配達員が依頼人の
もとに行き、相談内容を聴取してくるという追加ミッションが課せられるのだ。
報酬はなんと即金三万円。今日の依頼は、依頼人の大学生の息子が住む木造
アパートの一室で火事が起こり、焼け跡から息子の元カノの焼死体が出て来た、
というものだった。息子は、出火した時は一人でいたと断言するのだが、なぜ突然
元カノの焼死体が出て来たのか――。
設定はなかなか面白かったのですが、いろいろとツッコミ所が多すぎて。オーナー
のキャラも一作ごとにブレがあって、いまいち掴みどころがなかったし。そもそも、
探偵家業やるのに、なんでこんないちいち面倒な手順を踏むのか全く理解不能。
オーナーは料理人として優秀なのかと思えば、使ってるのは冷凍食品を解凍する
だけのものだったり。こんな危ない橋を渡りまくって、一般人である配達員に
何人も情報漏らして、挙げ句、配達員がよからぬ思惑を抱えていると知るや、
命の危険をちらつかせて脅迫。中には本当に犠牲になる人も・・・。一体、何が
したくてこんなやり方をするのか、意味不明だった。お金儲けだったら、もっと
違ったやり方がいくらでもあると思うんだけどな。探偵としての能力には長けている
ようなのだし。最終話で、シェフ(オーナー)が、一応、一番の目的について
話しているのだけど・・・それを聞いても、煙に巻かれているようにしか思え
なかったなぁ。その最終話で一話目の依頼人が失踪した真相も、結局何が真実か
曖昧なまま終わってしまって拍子抜け。今までに出て来た配達員たちが再登場
したりして、いくつもの伏線が繋がるような構成にはしてあるんだけど、その
説明が非常にわかりにくくて、何が何やらって感じだった(まぁ、過分に私の理解力の
せいではあるのですが^^;)。オーナーの『解釈』が真実ではない、みたいな
匂わせ方だったけど、じゃあ、結局、梶原さん失踪の真相は何だったんだって話に
なるわけで。なんだか、腑に落ちない終わり方で、モヤモヤが残りました。
評判の良い『#真相をお話しします』も読んでみたいと思ってたけど、そちらも
こんな雰囲気なのだとしたら、もしかしたら、この作家さんと相性悪いかも
しれない・・・と思ってしまった。まぁ、読んでみないと何とも言えないけれども。