
東京バンドワゴンシリーズ同様、こちらも年に一度のシリーズ新作。第23弾だそう。
長崎屋の手代・佐助がある日頭から血を流して若旦那たちの前に現れた。
その上、頬や額には熊の爪にでも引っかかれたような傷がいくつも出来ていた。
理由を聞くと、犯人は子鬼だという。でも、鳴家たちがそんなことが出来る訳が
ない。なぜ、佐助は本当のことを言わないんだろう?誰が一番にこの謎を解く?
若旦那の金子をご褒美に、妖たちとの推理合戦が始まった――。
佐助の怪我の謎、小町娘の縁談が壊れた理由、長崎屋に仔犬が迷い込んだ真相、
若旦那の悪夢に入り込んだ怪異は、なぜ兄やたちの結界を乗り越えられたのか、
長崎屋を辞める三人の奉公人の世話を頼まれた一太郎は、無事彼らの悩みを解決
出来るのか――。それぞれの謎に挑む一太郎や妖たち。みんなが謎解きを巡って
わちゃわちゃしてるのが楽しかったですね。鳴家たちは相変わらず愛らしかった
ですし。兄やたちの一太郎への激甘っぷりも変わらず。
今回、一太郎が寝込むシーンが少なくて良かったのですが、しばらく寝込まなければ
寝込まないで、一太郎自身は不安になるようで。明日は大丈夫かもしれないけど、
その先は寝込むことになるかもしれない・・・常に寝込むことが前提で日々を過ごす
一太郎が可哀想でならなかったです。これが一太郎のキャラクターなのはわかって
いるのですが・・・何かの奇跡が起きて、もう少し体力をつけてあげたりできない
のかなぁと思ってしまう・・・。仁吉の薬の調合がうまくいって、劇的に効く
薬が出来るとかさ。一太郎には妖の血が流れてるはずなのにねぇ。なんでこんなに
病弱なんだか。
それでも、最後のお話では、長崎屋の主人で父親の藤兵衛から、大事な仕事を任される
ことになり、少し成長した一太郎の姿が見られて嬉しかったです。でも、長崎屋
を離れる奉公人の三人、それぞれに自分の我儘を押し通そうとする奴ばかりで、
イライラしました。長崎屋は、長崎屋を離れた後も、彼らが困らないようにと
十分な金子を渡して送り出そうとしているのに。更にそれ以上のものを要求する
図々しさに辟易しました。でも、最終的には、一太郎の采配でそれぞれに良い
身の振り方が出来てほっとしました。一太郎は、適材適所を見分ける能力があり
ますね。将来、長崎屋の主人として藤兵衛の後を継ぐに当たって、能力は問題なし
だと思う。心配なのは病弱な身体だけ・・・。息子に甘い藤兵衛だけど、少しづつ
一太郎に跡継ぎとしての自覚を持ってほしいんだろうな、と思いました。
わんこのお話は、かわいい仔犬にこんな犯罪の片棒を担がせようとする悪者たち
に腹が立って仕方なかったです。でも、仔犬たちの引き取り手があって良かった。
前作で登場した火幻や以津真天もすっかり長崎屋に馴染んだみたいですね。火幻も
住む二階屋の飯炊き係になることが多い以津真天が、場久のおかげで美味しくご飯
が炊けるようになって良かったです(最初はかなりまずかったらしいw)。