ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

遊川ユウ「弁当探偵 愛とマウンティングの玉子焼き」(集英社オレンジ文庫)

なんとなく面白そうなタイトルだったので借りてみました。文庫だし薄いしで

めっちゃ読みやすかったですね。タイトル通り、お弁当の中身からいろいろと

その人のいろんなことを推理して行く日常の謎系ミステリー。主人公は、新卒で

医科大学の教務課に勤める玉田典子。共働きの両親の下で育った典子は、手作り

のお弁当というものをほとんど食べたことがない。そのため、典子はお弁当に憧れ

を抱いており、いつか自分でも作ってみたいと思っていた。ある日、いつもの

ランチメンバーのランチから一人あぶれてしまった典子は、先輩グループと一緒

にランチを取ることになった。その中の一人、一回り年上のユカリさんのお弁当

に違和感を覚えた。ユカリさんは料理上手で、お弁当の中身もすべてが完璧な

出来栄えに思えたのだが、その中で唯一、卵焼きだけが酷く焦げていて、失敗作

に見えたのだ。同じ先輩ランチメンバーの一人、梅星さんは、何か思う所がある

様子だった。仕事ができてクールな梅星さんだが、実は意外な才能があって――

(「愛とマウンティングの玉子焼き」)。

梅星さん、なかなかおもしろいキャラだな、と思いました。お弁当の中身を観察

して、その人の性格や悩みを当てるとは。お弁当見ただけで、そんなにいろんな

ことがわかるものかな、と首を傾げるところもあるのですけれど、確かに、

メニューや詰め方やお弁当箱の種類などなど、その人の性格が出るところもある

のかも、と思いました。私も独身時代は毎日職場にお弁当持って行ってましたが

・・・中身って、ほとんど代わり映えしないメニューだったような^^;今は、

働く時間が短くなって、昼食挟む日も、手作りのお弁当持って行くことはほとんど

なくなってしまった。相方のお弁当も、異動があってからはほとんど作らなく

なってしまったしなー(役職が上がって、忙しくて休憩室でゆっくりお弁当を

食べる時間が取れないのだそう)。ま、作るとしても、新たにおかず作ること

もなく、前日に夕食の残りを詰めて行くくらいですしね(冷蔵庫に入れて保管)。

働きながら早起きして子どもとか旦那さんのお弁当とか作ってるお母さんとか、

ほんっとに尊敬しますよ。

お弁当の内容見ただけでいろいろ推理できちゃう梅星さんの慧眼にも感心しちゃい

ましたが。ただ、一話目の玉子焼きの謎は、最初の方でこれしかないんじゃない?と

思ってたことが、そのまま真実だったので、ちょっと拍子抜け。これは、弁当探偵

じゃなくても推理できるでしょ・・・。

リスボールっていうものを初めて知りました。糖質制限とかダイエットしてる人

には当たり前のものなんでしょうか・・・??お菓子として食べるなら良さそう

だけど、これだけでお昼だったら、私は絶対午後仕事にならないと思う・・・^^;

最終話の飯田課長の話は酷かったですね。まぁ、お局みたいな女子社員がいる

会社は、大なり小なりこういうことがありそうですけれど・・・。誰かを標的に

していじめとか、本当に最低。梅星さんの隠された秘密にも驚きましたけれど。

弁当探偵をやっていた理由にも。飯田課長をやり込めてくれて、スカッとしました。

大事な人の為に立ち上がった梅星さんはとてもかっこいいと思う。辛い経験した分、

これからは梅星さんにも幸せになってもらいたいですね。

卵を割ることすらできなかった典子が、梅星さんと出会ったことで、少しづつ

料理の腕が上がって行くところが微笑ましかったですね。自分で作って美味しい!

と思えるのって、本当に嬉しい。自分で美味しいと思えるものが自分で作れるって

一番幸せだと思うなぁ。料理って、ちょっとした手間かけるだけで、格段に味が

美味しくなったりするから、やればやるほど奥が深いものだと思いますね。

典子と梅星さんの関係も良かったな。お弁当を通して通じあえる関係というか。

サクッと軽めに読めて楽しめました。