ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貴志祐介「さかさ星」(角川書店)

貴志さん最新ホラー長編。設定がミステリーっぽかったので、暗黒ホラー巨編

と帯に書かれていたけれど、かなり期待して読み始めました。

・・・う、ううーーーーーーーーん・・・・もうね、正直、どこで見切ろうかと

思うくらい、読んでも読んでも面白くならなかった・・・。数ページ読んでは

睡魔が襲って来るの繰り返し。いや、ほんと、私には合わなかったとしか言いようが

ない。呪われた一族が出て来るのだけど、ほんと、読む度に眠気が襲って来るので、

この本自体に、読者が読み進められないような呪いがかかっているのかと本気で

疑ったくらいでしたよ・・・。貴志さんのいつものリーダビリティはどこへ行って

しまったんだ、と首を傾げるばかり。ミステリ要素はあるといえばあるけど、

さほど驚きがある訳でもなく。まぁ、発端が呪いだから仕方ないのかもしれま

せんけども・・・。

ただ、終盤で一家惨殺事件の犯人がさらっと明らかになるのだけど、犯人が判明

したにも関わらず、主人公も霊能者の賀茂もその人物を糾弾しようとも捕まえよう

ともしない。自分にも周りの人にも危険が迫っているのに。え、なんでそのまま

野放しなの?と驚きました。まぁ、何の力も持たない主人公の亮太じゃ、太刀

打ちできないかもしれないけどさ(賀茂はその時その場にいなかったけど、

電話で亮太にアドバイスはできたはずなのだけど、それもなかったし)。

なんかこう、最後も犯人と対峙して相手を倒して・・・っていう場面とかがなく

、いまいち盛り上がりがないまま終わってしまった感じで拍子抜けだった。

戦国時代から続く呪いが相手じゃどうしようもないのかもしれませんが・・・

うーむ。とにかく、犯人が仕掛けた呪物が家のあちこちに置いてあるのだけど、

それの説明と、過去の因縁話が長くて長くて。もう、その説明いいよ・・・って

何度心が折れかけたことか。そこの説明で作品の大部分が構成されていると

言っても過言じゃないと思う。そこを面白いと思える人は、すごくハマる作品

だと思う。しかし、私には退屈にしか思えなかった。もっと、一家惨殺事件に

焦点を当てて、そこの謎を追って行くような話だったらハマってたと思うのだけ

ども。この煮えきらない思いは何だろう・・・。600ページを超える作品を

読み切って、残ったものは、読み切ったという達成感のみだったような気がする。

主人公の亮太のキャラがまた、なんか中途半端だったんですよね。登録者数も

大していないユーチューバーで、身内に起きた悲惨な一家惨殺事件を題材にする為、

事件が起きた親戚の家を撮影して、ネットに上げようと目論むような不謹慎な奴。

何者かによって事件の起きた福森家に仕掛けられた、たくさんの呪いのかかった

品々に恐れをなして、何をするにも腰が引けてるし。なんか、弱い。それに対して、

霊能者の賀茂禮子は、なかなかに強烈なキャラクターだった。福森家に仕掛けられた

呪物の存在や、過去に起きた出来事を次々と言い当ててしまうので、途中まで

彼女の霊力が本物なのか、それとも偽物なのか、よくわかりませんでした。そんなに

詳細にすべてを言い当てられるというのが、そもそも疑問に思えて。何か裏が

ありそう、と勘ぐりながら読んでました。実際、中盤で彼女に敵対するある人物が

登場して、その疑問が更に強まることになるのだけど。常に冷静で、すべてを見通し

ているような彼女のキャラクターは、この作品の中で唯一光っている要素だった

かもしれない(個人的には)。アマゾンの他の人のコメント読んでたら、貴志

さんの他の作品に登場しているキャラクターらしい・・・確かに、なーんか

名前に覚えがあるようなないような気はしてたんだけどね。でも、どの作品に出て

来たのかとか全然覚えてない。読んでない作品かなぁ。知ってる方教えて下さい。

彼女が最後に登場して事件を解決するって展開だったら、もう少し溜飲が下がった

かもしれないんだけどなぁ。亮太は亮太で、最後は自分が何とかするしかない、

と孤軍奮闘した訳で、そこは偉かったとは思うけどさ。

とにかく、全体的に物語が単調で冗長で、読み切るのに非常に時間がかかって

しまった。次々に不可解な怪奇現象が出て来る割に、全然怖くもなかったしね・・・。

ちょっとガッカリな作品だった。よく読み切ったな、自分。