ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「新謎解きはディナーのあとで2」(小学館)

新シリーズになってから久しぶりに続編が出ました。令嬢刑事と毒舌執事コンビの

関係は相変わらずでしたね。新シリーズになってから、何となく執事の影山の

毒舌のキレがいまいちのような。大した毒舌でもないのに、なぜかお嬢様はその

言葉にキレまくってましたけど(そこのくだりは鉄板らしいw)。確か前作から

登場した、麗子の後輩で新人の愛里刑事の出番が増えた分、国立署に戻って来た

上司の風祭警部の登場シーンが少なくなった気が。愛里ちゃんのキャラは嫌いでは

ないけど、やっぱり、風祭警部にはもう少しアホキャラを全面に出して、現場を

引っ掻き回して欲しい気はしますねぇ。まぁ、今回も人の推理を自分の手柄にする

ような姑息なことをちょいちょいやってますけどもね。一応自分なりの推理を

してるシーンもありますし(微妙に当たらずといえども遠からず、みたいな推理

なのよね。中途半端~^^;)。

ミステリ的には、小粒な作品が多かったかなぁという印象。確か前作も同じような

感想だったような。でも、まぁ、ファンとしては新作が読めるってだけで嬉しい

ので!当然ながら、随所に場が寒くなるようなユーモアも散りばめられておりますし。

楽しく読めたからよしとしよう(求めるレベルがファン補正のせいで超低空w)。

 

では、各作品の感想を。

第一話『笠原邸の殺人』

笠原貿易の会長が、笠原邸の別館で絞殺されて発見された。遺体のそばには大皿が

割れて飛び散っていた。発見者は複数いて、遺体を発見する直前に大皿が割れた

音を聞いていた。発見者たちが駆けつけた時、現場は密室状態だった。一体どの

ようにして犯行はなされたのか。

影山の推理は、ちょっと強引に感じましたねぇ。特に、大皿を割った方法のくだり。

あの位置から、犯人の思惑通りの位置にソレが届くようにするには、相当の鍛錬が

必要な気が・・・。余計に不自然になる気がするんだけど、どうなんだろう。

 

第二話『灰色の血文字』

芸能事務所の社長が殺された。現場には『アキラ』の血文字が残されていた。アキラ

とは、カメラマンのアキラのことなのだろうか――。

これは影山の推理に納得できました。ダイイングメッセージが残された理由も。

被害者は、パワハラ野郎なのかと思いきや、実はいい社長だったのに、殺され

ちゃって可哀想だった。

 

第三話『浜辺のパラソルの問題』

三浦半島の孤島の別荘で行われる婚約披露パーティに正体された麗子。しかし、

主役の御曹司が殺害されてしまう。第一発見者である麗子と影山は、警察の調査に

協力することになるのだが。

パラソルが移動していた理由はなるほど、と思いました。ちょっとわかりにくかった

気もするけど(私のアホな頭が原因^^;)。

 

第四話『服を脱がされた男』

多摩川の河川敷で、全裸の変死体が見つかった。遺体には、首から胸にかけて

死後につけたと思われる浅い傷がついていた。犯人はなぜ被害者の衣服を脱が

せたのか。また、なぜ死後に遺体を傷つけたのか?

なるほど、影山の推理を聞いて、確かに、二つの謎の答えは、それしかありえない、

と思えました。ごくごく単純なことだったのに、考えが及ばなかったなぁ。

 

第五話『四回殺された女』

ワンルームの一室で若い女性の首吊死体が発見された。遺体には、吊るす前に

後頭部を何かで殴打され、ロープで首を締められ、ナイフで胸を刺された痕跡が

あった。なぜ犯人は、四種類もの方法で女性を殺さねばならなかったのか――?

なんとも酷い犯行で、若い女性の死に方としてはひどすぎる、と思いました。

ただ、被害者も自業自得な部分はあったみたいでしたけども。四度殺された

真相は意外とシンプルでしたが、言われてみれば納得でした。

ラストの、麗子と影山の会話にニヤニヤ。麗子は、なんだかんだ言いながら、

影山との関係をちょっとは進めたいと思ってたりするのかな~と微笑ましかった。

影山の胸の内はよくわからないですけど、彼もお嬢様のことを憎からず思っていると

思いたい・・・。