ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

宮島未奈「婚活マエストロ」(文藝春秋)

今年の本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りに行く』が話題沸騰となった宮島さんの

新作。成瀬の続編はまだまだ回って来そうにないのですが、こちらは新着図書

情報が載ってすぐに予約しておいたので、比較的早めに回って来ました。

タイトル通り、婚活にまつわるお話。この手のテーマの作品読むのが大好きな

もので(他人の恋愛とか婚活話とか大好きw)、読むの楽しみにしてました。

期待通り、楽しく読めるお話でしたね~。主人公は、独身で40歳になったばかりの

しがない三文こたつ記事ライターの猪名川健人。webライターとして、ホーム

ページに載せるこたつ記事を大量生産することで、なんとか糊口を凌いで暮らして

いる。そこに、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事

を書く仕事が舞い込んだ。雑居ビルの中にある小さな事務所を訪れた猪名川は、

社長から、記事作成の参考に、当日の夜開催される予定の婚活パーティにお試しで

出席することを勧められ、しぶしぶ承諾する。手作り感満載のパーティを仕切る

のは、スーツ姿の美女・鏡原奈緒子。彼女は脅威のカップル成功率を誇る、伝説の

婚活マエストロなのだと噂されているらしいのだが――。

婚活初心者の猪名川と、婚活マエストロ・鏡原さんとのやり取りがなかなか良かった

ですね。最初は結婚なんて考えてもいなかった猪名川が、「ドリーム・ハピネス・

プランニング」の婚活イベントに関わることで、少しづつ婚活に前向きになって

行くところも良かったです。婚活にまつわるあれやこれやを読むのも面白かった

ですね。「ドリーム~」の活動内容は、一昔前の婚活そのものって感じで、ある意味

新鮮味があったような。ちょっと前に、ちょうどテレビで二泊三日の泊りがけで

行う婚活イベントを取り上げたバラエティ番組を観たばかりだったので、鏡原さん

が、そこに出て来た婚活コンシェルジュの女性と重なりました。ダメな参加者たちに

結構厳しいことをがしがし言うのだけど、それは、本当にそのイベントで婚活を

成功させて欲しいから、というのが伝わって来て、ちょっと感動してしまった。

最後、カップル成立した時には涙ぐんでましたしね。ただ、鏡原さんの場合は、

第六感的な勘が働いて、誰と誰が相性がいいのか、一目見てわかってしまうという

特殊能力があるので、相性の良い二人を一緒にさせるよう働きかけたら、大抵

うまくいってしまうのだけど。でも、その特殊能力があろうがなかろうが、婚活

イベントを成功させたいという真摯な気持ちで取り組んでいるのは間違いないので、

好感が持てました。

猪名川と鏡原さん、なかなか相性が良さそうだよな~と思いながら読んでいたので、

終盤の展開には、にやりとしちゃいました。まぁ、ここは賛否両論あるかもしれ

ませんが・・・。

婚活イベント参加者は、なかなか個性的な人が多かったですね。積極的な人もいれば

消極的な人もいて。今は婚活アプリなんかでお手軽に婚活出来る時代なのでしょう

けど、基本に戻って、こういう基本的な婚活で出会う方が、成婚率は良さそうに

思ったりして。やっぱり、実際会って話してみないと、その人の性格とか良さとか、

自分との相性とか、わからないですもんね。身分証明もしっかりしてますしね。

私も、今の相方と出会ってなかったら、孤独死に怯えて、必死こいて、こういう

婚活イベントに参加していたかも・・・。

幸せな未来を夢見て、婚活イベントに参加する参加者たちが愛おしく思えました。

誰だって、いくつになったって、パートナーと幸せになりたいに決まってる。

猪名川のアパートの大家の田中さんのように、80歳を超えても婚活する人も

いるのだからね。年齢を気にして躊躇する人にこそ、こういう業者が必要なのかも

しれないなぁと思いました。「ドリーム・ハピネス・プランニング」社の最後は

ちょっと悲しかったですが。今後、鏡原さんが個人で事務所を立ち上げたりする

のかもしれないなぁ。あの能力を埋もれさせておくのは勿体ないですもんね。

気軽に楽しく読める一冊でした。