ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有栖川有栖「日本扇の謎」(講談社ノベルス)

久しぶりの国名シリーズ新刊。今回ついに日本編が登場。私はノベルスで読んだけど、

単行本でも同時発売されたのだとか。でも、やっぱりこのシリーズはノベルスで

読みたいよな~と思いました。なかなかのボリュームで、結構時間かかっちゃった

な。事件の部分はちょっと冗長なところもあって、途中若干中だるみに感じ

たりもしたのだけど、火村&アリスコンビが、火村先生の下宿先で猫たちとくつろぐ

シーンなんかもあって、そっちの方が楽しめた(おい)。家主の時絵さんとの

やり取りもほのぼのしてて良かったなぁ。でも、時絵さんにアパートを売って

欲しいと言ってくる輩もいたりして、この先いつまで火村先生が下宿できるのやら。

ファンとしては、いつまでも時絵さんと仲良く暮らしてて欲しいと思ってしまう

けど、相手も老齢ですし、近い将来下宿を出なきゃいけないことになりそうで悲しい。

そもそも、店子が准教授だけですしね・・・。一人で何部屋が借りて、余分に

払ってるらしいけども。

おっと、話がそれてしまった。備忘録の為、内容紹介もしておかねば。

京都の舞鶴の浜辺で記憶喪失の青年が見つかった。身元を証明するものは何も持たず、

現金の類も一切持ち合わせていなかった。しかし、唯一手に持っていたのは、

富士山が描かれた扇だった。一点ものの扇を頼りに、青年の身元が判明した。

青年は武光颯一といい、そこそこ有名な日本画家の息子で、六年と数ヶ月前に

失踪していたという。颯一は記憶喪失のまま自宅に帰ったが、その自宅の離れで

不可解な密室殺人事件が起きる。離れは、自宅に戻った颯一が寝泊まりしていた

場所だが、なぜか殺人事件後に姿を消していた。犯人は失踪した颯一なのか――。

 

以下ネタバレあり感想になっております。

未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

密室の真相には拍子抜け。いくら何でも、もうちょっと捻りが欲しかったような。

まぁ、状況を説明されると納得はできるけどもね。いろんな要素が錯綜していて、

途中何が何やらって感じだったけど、火村先生の謎解き解説を読んだら、意外と

シンプルなからくりだった。犯人の動機は身勝手以外の何者でもないし、巻き込まれ

た被害者は可哀想と言うしかない。颯一に至っては、ただただやりきれない気持ち

しか持てなかった。浜辺で記憶喪失になる前の失踪中の時が、人生で一番幸せ

だったのかなぁ・・・。それか、記憶喪失になった時に浜辺で出会った中学教師

の藤枝さんといる時か。とにかく、彼は武光邸に戻るべきではなかったということ

なんだろうな。不幸が重なって不幸な事件を引き起こしたとしか思えず、悲しい

気持ちだけが残りました。

最後、アリスが、颯一が記憶喪失だった時に出会った中学教師の名前を仮付けする

んだけど、なんでこんなにぴったり当てることが出来るの!?アリスってエスパー

だったの!?とびっくりでした。んん、でも、よく考えると、この火村シリーズ

って学生アリスのアリスが書いてるって設定なんだっけ?あれ、逆だっけ。

なんか、二つのシリーズの関係性が入れ子状態だった記憶はあるんだけど。忘れ

ちゃった。作中作みたいな設定になってるから、アリスが決めた名前で彼女が登場

したのかなぁ・・・とか考えてたら、わけわかんなくなってきた^^;ま、そもそも

これだけ長いシリーズで時代もリアルタイムで移り変わっているのに(作中では

コロナ禍が反映されている)、なぜかキャラクターが年を取らないってところも、

作中作っぽいのよね。不思議なシリーズですよね。