ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

辻村深月「あなたの言葉を」(文藝春秋)

毎日小学生新聞で連載されたエッセイを書籍化させたもの。小学生新聞ということ

で、小学生相手に語りかける内容になっています。読者の小学生たちからの質問

に答える回なども。今回も、人たらし辻村さんが爆発しております。どの回の

言葉も、本当に温かくて、子どもたちのためを想って綴っているのがとても

よくわかります。ご自身にも小さなお子さんがいらっしゃるから、子どもたち

の疑問や体験がとても身近に感じられるのでしょうね。子どもの頃に、大人に

こんな風に語りかけてもらえたら、きっと見える世界が変わってくるんじゃ

ないのかなぁ。私が子どもの頃は、大人はもう、自分より遥かに賢くて、なんでも

出来て、ずっと上の存在だと思ってた気がする。でも、いざ自分が大人になって

みると、ぜんぜん子どもの頃から成長してないように思える。

子どもだった自分の積み重ねで今に至っているのだから、当たり前なんだけども。

でも、もし私が、辻村さんが子どもたちから受けた質問を受けたとしたら、辻村

さんと同じように答えられるだろうか、と考えると、絶対無理だと思う。こんな風に

子どもたちに寄り添って、誰も傷つけず、でもちゃんと主張すべきところは主張

するような、的確な言葉で返すなんていうのは。優しい言葉で語りかけているけど、

ちゃんとそこには芯があって、子どもたちの心に響くであろう内容になっている

のがすごい。コロナ禍真っ只中での言葉も、きっと不自由で理不尽な思いをしている

子どもたちの心に響いたんじゃないかなって思えるものばかりだった。

本や図書館について書かれたものも多くて、子どもたちだけじゃなくて、本好き

にとっても共感出来るエッセイだと思いましたね。ちょいちょい、綾辻さんへの

リスペクトが伺えるのも微笑ましい。ほんとに、辻村さんは綾辻さんが大好き

なんだなぁ。しっかり、『十角館~』の宣伝もしてるし(笑)。辻村さんの

紹介読んでたら、私もまた読み返したくなってしまった。まぁ、十角館に

関しては、いろんな人がいろんなところで取り上げるものだから、大抵その度に

読み返したくなるのだけどもね。なんせ、読んだのが昔すぎて、衝撃のオチすら

ろくに覚えていないのですよ(!!)。単行本の特別版買って、眠らせてあるの

よね~・・・そろそろ読むべきかしらん(笑)。

どの言葉も、子どもたちを思って、優しく温かく真摯に語りかけていて、こちらまで

心がぽかぽかと温かくなりました。このエッセイ読んだ人、100人いたら100

人が、「この人絶対いい人だ!」って思うに違いない。辻村さんみたいな友達が

いたら楽しいだろうなぁ。子どもの頃仲が良かった友達についてのエッセイが、

心に残りました。離れてしまって全く会ってなかったのに、突然の再会で再び仲良く

なれた友達と、辻村さんが大好きな『十角館』をプレゼントにくれるくらい、

思い出深い大事な友達だったのに、疎遠になってそのままになってしまった友達と。

大人になると、特にけんかした訳でもないけど、なんとなく疎遠になっちゃう

友達って絶対誰にでも一人や二人はいると思う。

でも、離れていてもそうでなくても、心の中にはずっとその友達がいて、遠くで

幸せを願ってる。私にも、思い当たる人物が何人かいます。もう二度と会うことが

ないかもしれなくても、元気で幸せでいてほしいと願う友達が。

辻村さんが会えなくなってしまった大好きな友達が、このエッセイを読んで

連絡くれたりしたらいいのにな、と思いました。

辻村さんの子どもたちへの優しい目線に癒やされた一冊でした。