ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「朝比奈さんと秘密の相棒」(実業之日本社)

東京国分寺にある私立恋ヶ窪学園を舞台にした新シリーズ。今回は理事長の娘・

朝比奈麗華と、気弱で冴えない同級生の石橋守がバディを組むユーモアミステリー。

今回も、東川さんらしいゆるーい学園ミステリーになっております。主人公の

麗華は、どこか謎解きはディナーのあとでの麗子とかぶるキャラクターですね。

相棒が毒舌吐くし、基本プライドが高いから、その毒舌にいちいち逆上して反応

する辺りも似ているし。お嬢様と毒舌家ってコンビがお好きなのかな?

探偵役が一風変わってます。なかなかすごい設定考えて来たなぁって感じ。しかし、

毎回ビンタされる守少年が可哀想でならない^^;

ネタバレになるから詳しくは書かないけれど、今回のテーマはズバリ、『石橋を

叩いて渡るミステリー』ですね。え、意味不明ですか?いえいえ、読めばこれが実に

言いえて妙な文言だってわかるはずですよ!タイトルの秘密の相棒の意味もわかる

はずです。

朝比奈さんは理事長特権使ってやりたい放題。反発する人も出て来そうだけど、

そこは理事長の娘ってことで、みんな素直に従うところが面白い。実際こんな

生徒いたら大問題になりそうだけど、そこは東川ワールドってことで。みんな

内心では呆れながらも、朝比奈さんには逆らえないってことで、容認されてしまう。

だから、学園で起きた事件の調査の際も、みんな素直に口を割るという。そこは

設定の上手さかな、と思いましたね。麗華に目をつけられた守くんは、いろいろ

巻き込まれて気の毒でしたけど^^;その上、いろんな人にビンタされたり殴られ

たり・・・身体大丈夫?って心配になりましたよ。まぁ、頭の方は大丈夫とは

言い切れないわけですし・・・。

ミステリ的な完成度は、ちょっと前に読んだ『謎ディ』の新作よりは高かったと

思うな。盲点をつかれたトリックなんかもありますし。一話目の南京錠のやつは

ちょっと拍子抜けな真相ではあったけど、まぁ、盲点をつかれたと言えなくも

なかったかなとも思えたし、二話目の厚底ブーツから導かれる謎解きには感心

したし、三話目の生徒会役員室が荒らされた事件の真相は細かい伏線が効いていて、

しっかり本格テイストになってて秀逸でした。特に、麗華の、生徒にあるまじき

豪華な椅子や、役員会議で使われたホワイトボードに残された#の伏線から、焼却炉

に目をつけるところに感心しましたね。

突然殺人事件になったからびっくりしたけど・・・^^;四話目のプールの天使

のやつは、ちょっと強引に思えたけどね。トリックとしては面白かったけど

・・・そんな大きな◯◯◯◯◯用意出来るもの??しかも人が乗れるような。

5話目の、茶室から生徒が消えた真相は、まさしく盲点をつかれたって感じでしたね。

麗華に宛てた手紙には一体何て書いてあったんですかねぇ。本当にアレだったの

かなぁ。

なかなか斬新な設定で、面白いコンビだな、と思いました。相変わらず会話文の

ゆるさには何度もツッコミ入れたくなりましたが(笑)。このゆるさと本格の

混ぜ具合が東川ミステリの真骨頂ってことで。楽しく読めました。