ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有栖川有栖「砂男」(文春文庫)

有栖川さんの文庫新刊。単行本未収録の短編ばかりを集めた短編集。単行本未収録

とはいえ、文庫のアンソロジーで既読の作品も入ってましたね。御本人のまえがき

にも書かれてますが、一冊の本に江神シリーズと火村シリーズ両方の短編が収録

されているのは、なかなかに貴重なんじゃないでしょうか(この間読んだ、他作家

さんたちによる有栖川さんのトリビュートアンソロジーではありましたけどね)。

ノンシリーズ作品も収録されているので、久しぶりにシリーズもの以外の有栖川

作品を読んだ感じがしました。

 

では、各作品の感想を。

『女か猫か』

江神シリーズ。

密室状態の部屋で一晩明かした男の顔には、なぜか翌朝になって爪痕のような傷が

ついていた。猫の子一匹入れる隙間はなかったはずなのに・・・一体なぜ?

江神さんの解説読んだら、かなりシンプルな謎解きだった。意外性はあんまり

ないけど・・・現実の謎の真相なんて、こんなものだよねっていうようなリアリティ

はあったかな。ただ、バンドの女性メンバー三人が猫にまつわる名前って、そんな

偶然ある?とツッコミたくなってしまった(^^;)。そっちの方はリアリティは

なかったかも(笑)。

 

『推理研 VS パズル研』

江神シリーズ。

望月と織田がチェーンの居酒屋で隣合ったのは、同じ大学のパズル研のメンバーたち

だった。二人は、そこであるパズルを出されたのだが――。

これはアンソロジーで既読でしたね。緑色の目の村人と青い目の村人のやつ。江神

さんの解説読んでも、なんでそうなるのかいまいち理解出来てないんですが・・・

(アホ)。この手のパズル的問題は苦手だーー^^;;推理研のメンバーたちが、

パズルの答えとは別に、問題のその先を考えるところが面白かったですね。

 

『ミステリ作家とその弟子』

ノンシリーズ。

本格ミステリ作家の家に原稿の進捗状況を伺いに行った編集者の明夏。時間通りに

伺ったが、作家の方が時間を間違えていたらしく、一時間ほど待たされた。その間

作家は、ミステリ作家志望の弟子にミステリに関するレクチャーをしている

ようなのだが――。

これもアンソロジーで既読でした。うさぎとかめの考察とか興味深かったですね。

ラストの反転よりも、作家と弟子の童話考察の方が印象に残るお話かも。

 

『海より深い川』

火村シリーズ。

海に身を投げた男は、生前、『海より深い川を渡る』と口走っていたという。この

言葉には、一体どんな意味があるのだろうか――。

法律が変わり、単行本収録を見送っていた作品だそう。確かに、真相の一部には

現行の法律とは食い違っているところがありますね。でも、そこはあらかじめ注意

書きとかしておけば問題なかったような気も。隣人が聞いた四人が諍い合う声の

真相や、冒頭の『海より~』の言葉の意味など、細かい伏線がきれいに繋がって

すっきりしました。既存の火村シリーズの中でも出来の良い作品のひとつと云える

のでは、と思いましたね。

 

『砂男』

火村シリーズ。

最近巷で噂になっている『砂男』の都市伝説を研究していた社会学者が殺された。

遺体には、壊れた砂時計の砂がばらまかれていた。

火村から要請を受け現場に赴いたアリスは、野次馬の中に、『砂男』にそっくりな

風貌の大男を見かけるのだが――。

犯人は意外といえば意外ではあったかな。あとから考えると、かなりあからさまに

伏線が張ってあったわけなのですが。なんとなく、言動が気になる人物ではあった

のですけどね。動機は納得いきかねるものがありましたが。完全に独り相撲って

感じで。被害者の生前の行動は嫌悪しかなかったので殺されても同情は出来な

かったけど、報復するとしても、やるのはアンタじゃないでしょ、とツッコミたく

なりました・・・。

 

『小さな謎、解きます』

ノンシリーズ。

商店街の中ほどに位置する<街角探偵社>。祖母から居抜きで物件を譲り受けた

樋間直人が始めた探偵社だ。推理小説ファンの直人が、ドアに<小さな謎、

解きます>という文言を書いて張ってみると、その通り、小さな謎を抱えた

依頼人がちょこちょこやってくるようになった。便利屋的な依頼が多いのは

不満だが。しかし、ある日やってきた若い男の依頼は、『サークル仲間が書いた

推理小説の犯人を当ててもらいたい』というものだった――。

これ好きですね。短いけど、設定自体が好きです。謎自体はなんてことない内容

だけど。直人と甥の健斗くんとの関係がいいですね。ラストもほっこり。大人に

なった健斗くんと二人で探偵業やってる続編とか読みたいなぁ。