
東京創元社☓カクヨム 学園ミステリ大賞受賞作。こういう賞があることも初めて
知ったのですが。図書館の新着案内で内容紹介見て、面白そうだなと思って借りて
みました。東京創元社発の学園ミステリなら、大抵ハズレはないだろうと思い
ましたしね。
なるほど、これは今までになかったタイプの学園ミステリだな、と素直に感心
しましたね。こういう切り口があったか。主人公だけではなく、出て来る登場
人物、学生に関してはほぼみんな何らかの障害を抱えた子供たち。それもそのはず、
舞台となるのは高等支援学校。それぞれに抱える障害は違えども、大なり小なり、
何らかの支援が必要な子供たち。デリケートな題材なので、言葉遣いが難しい。
失礼な言い回しがあったら申し訳ありません。悪意はかけらもないのでお許しを。
主人公の架月自身も、どうにもならない自分の障害を持て余し気味。学力は非常に
高いけれども、他人に対する感情がうまく処理出来ず、尋常学校に行っていた中学
まではクラスのお客様扱いで、友達もできなかった。けれども、この春から通う
ことになった明星高等支援学校では、みんなが少しづつ、人と違う特別なところが
ある。架月は、この学校で友達が欲しかった――。ある日、架月は、先輩の利久の
清掃担当場所である階段に、色とりどりの紙吹雪が散らばっているのを見かける。
その直前に、利久が架月と同じクラスの莉音とトラブルになっていたのを知って
いる架月は、莉音が嫌がらせでやったことではないかと考えた。しかし、それを
先生に報告すると、ことの真偽を証明する為、架月自身に調べてみてほしいと
頼まれた。架月は莉音がやったことではないと思いたい。利久先輩も、莉音のこと
も好きだからだ。架月は、莉音の仕業ではないと証明するため、調査に乗り出す
が――。
少し障害を抱えた探偵役の架月が、高等支援学校で起きる不思議な出来事を解決
する、というちょっと特殊な設定が、とても効いていると思いました。架月視点
で描かれますが、少し他人とズレた考え方をするので、戸惑うことも多かった
です。人より少し出来ないことが多い架月ですが、その分純粋さがあり、友達の
ために事件を解決したいと奮闘する姿勢は応援したくなりましたが、やはり他人に
対する情緒という点で共感出来ない思考の時もありました。他社の気持ちを汲み取れ
ないところがある為、失敗してしまうことも多い。いわゆる、KYな言動をしてしまうと
いうやつですね。それでも、一つ事件を解決する度、彼の思考能力は成長し、
友達の為に出来ることを学んで行く。その過程の描き方がとてもお上手だと思い
ました。高等支援学校という、馴染みのない世界のことがよく描けていると思います。
それもそのはず、作者の雨井さんは、高等支援学校で職員として働きながら、
この作品を書かれたのだとか。そして、東京創元社とカクヨムが企画した学園
ミステリ大賞の大賞に選ばれた。雨井さんは、少しでも多くの人にこういう学校の
こと、生徒のことをわかってほしいと思って書かれたのでしょうね。普通の人と違う
からと言って冷たい目で見たり疎外されることなく、彼らには彼らにしか出来ない
ことを伸ばして、胸を張って生きてほしい、というメッセージが伝わって来るように
思いました。
生徒たちも、それぞれに抱える障害が違うので、それぞれの個性がありましたね。
個人的にわかる範囲のものは、由芽先輩がダウン症、利久先輩が自閉症系かな、
というくらいでしたが(間違っていたらすみません)。障害にもいろんなタイプが
あるので、一見どこに問題が?と思うタイプの子もいました。特に、莉音が憧れる
優花先輩は、どういうタイプの障害があるのか、最後までわからなかったです。
問題行動も問題発言もほとんどしてませんでしたし。顔も可愛くて性格も優しく
て・・・普通の学校にいても、周りから憧れるタイプでは?と思いましたね。
もちろん、表面上ではわからない何かがあるからこの学校に来たのでしょう
けれど・・・。
途中何度か彼らの言動にイライラさせられることもありました。普通の反応とは
違うことが多いので、理解できないこともしばしば。彼らの言動に戸惑い、共感
出来ないもどかしさに苛立ち、読み進めづらい時もありました。それでも、終盤、
いなくなった深谷純を心配して、架月たちみんなが彼のために知恵を出し合って
彼を捜そうとする姿に心を打たれました。そして、深谷自身が、なぜ姿を消した
のか、その理由もまた、ある人物の為を思っての行動だったので、胸が熱くなり
ましたね。
タイトル通り、高等支援学校ならではの、ちょっとだけ特別な友情物語だと思い
ました。
内容的には、来年の本屋大賞候補になってもおかしくないんじゃないかな。多くの
人に手にとってみてほしい、という意味では、大賞にさえ相応しい作品とも思えるし。
ミステリ的な面白さもありましたしね。
ただ、ミステリ好きに関わらず、いろんな方に読んでもらいたい作品だと
思いました。