ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青山美智子/田中達也「遊園地ぐるぐるめ」(ポプラ社)

とある町にある山中青田遊園地、通称、『遊園地ぐるぐるめ』。ある一日、この

遊園地を訪れた、六組のお客を巡る悲喜こもごもを描いたハートフル小説。

小説家青山美智子と、ミニチュア作家田中達也、二人によるコラボ連作集。各章

扉ページの田中さんのアートを見て、青山さんが小説を書き、その物語を読んだ

田中さんが更にアートを作成(章終わりページのアート)という、完全に

お互いがお互いを補完しあって出来た一冊となっております。面白い趣向の

作品集ですね。青山さん、ほんとにアートの世界が大好きなんですね。以前も

イラストレーター(?)の方とのコラボ作品ありましたよね。

朝から閉園の時間に至るまでの、とある町の遊園地の一日を追った作品。

片想いの彼女を初めてデートに誘った青年、料理教室で知り合った彼氏いない暦=

年齢の女友達同士の二人、甥の子供(姪孫)が可愛くて仕方がない70代の仲良し

老夫婦、一人で営業に訪れたキッチン用品メーカーの35歳の営業マン、ヒーロー

ショー目当てでやってきた四人家族、引退試合を終えたばかりの女子バスケ部

四人組・・・それぞれに鬱屈した思惑を抱えて、このぐるぐるめにやってきていた。

この遊園地にやってきたことで、各々、ほんの少しその鬱屈が晴れて、前向きな

気持ちになれていく。園内にいる外人ピエロの存在も大きいですね。ポップコーン

を配ったり、風船を配ったり。明るく優しくお客に接するその姿に癒やされる人も

多いのでしょう。

青山さんらしく、悪い人が全然出て来ない、ほっこり心温まる一冊。世の中、

こんなにいい人ばっかじゃないよー、と文句を言いたくなる人がいるかもしれま

せんが(^^;)、これが青山ワールドなのでね。

この遊園地がなぜぐるぐるめと呼ばれることになったのか、それぞれに聞いた説が

違うのが面白いですね。都市伝説あるあるかしらん。回り回って、全然違う説に

たどり着いちゃうみたいな(笑)。正解は、終盤に出て来ますけどね。

青山さんの小説もほっこりするけど、間に挟まって出て来る田中さんのミニチュア

アートもなんて可愛らしいのだろう!と思いましたね。遊園地が全部食べ物で

出来ているんですよ。ハンバーガーのメリーゴーラウンド、塩の容器と軽量

スプーンの回転マシン、割り箸と紙コップのフードコート、フランスパンと

ウインナーのジェットコースター、ドーナツのイベントステージ、フォークと

とうもろこしのスイングマシン、ブルーハワイみたいな青いドリングのプール、

ピザの観覧車・・・もう、アイデアがすごすぎる。写真でもその精密さがわかる

くらいだから、実物は圧巻だろうなぁ。見てみたーい。

一話目の片想いの青年の話は、絶対最後に彼女視点の物語があるだろうな、と

予想してましたが、予想通りでしたね。青山さんお得意の構成ですね。最初に、

彼女の方が早く待ち合わせ場所に来ていた時点で、彼女の気持ちなんてわかり

きっていると思いましたけどもね。

優しさと可愛さとハッピーが詰まった一冊でした。