
伊坂さん最新作。作家25周年記念書き下ろし作品だそう。絵本のような体裁で、
あっという間に読めちゃいます。ただ、内容は絵本みたいな可愛らしさからは
乖離していて、大分重めかな。SFっぽいというか、ちょっと独特の世界観。
どちらかというと伊坂さんの作品の中でも、メッセージ性が強い、苦手なタイプの
作品でしたね。
大規模停電、強毒性ウイルスの蔓延、飛行機事故、高速増殖炉からの放射能漏れ
などが立て続けに起きて、世界が恐慌に陥っている世の中が舞台。なんか、ここ
数年の現実世界ともリンクしている感じはしますね。去年、年明けから立て続けに
不幸が起きた時のことを思い出しました。伊坂さんも、ここ数年のコロナ騒動やら
自然災害の脅威を経験して、いろいろ思うところがあったのかなぁとか想像しながら
読んでました。
本書の世界では、こうした立て続けに起きる不幸には、原因となるものが存在します。
それは、人口知能『天軸』の暴走。『天軸』とは、天災及び事故、犯罪の予見と
予防に関する機軸というアルゴリズムを基に開発された人工知能のこと。その
『天軸』が暴走したことで、こうした不幸が連鎖的に起きているのだという。
この『天軸』の暴走を止める為、開発者の『先生』は一人垂直離着陸機を操縦して
『天軸』のある場所へ向かい、見事暴走を止めた。しかし、その後先生と連絡が
途絶えてしまった。おそらく、機体が墜落したのだろうと思われた。そこで、
先生を救出する為、五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗という三人の精鋭が選ばれた。
三人は先生を探し出す為、先生がいると思われる場所へと出発するのだが――。
これは、このページ数で描き切れる物語なんだろうか、と疑問を覚えましたね。
25周年を記念した作品がこれだと、かなり肩透かし感は否めないなぁ。確かに
装丁は美しくて特別感はあるけれど。
『天軸』『三瑚嬢』『蝶八隗』のキーワードで、根底に『西遊記』があるのだろう
ことが伺えるけれど、だったら五十九彦じゃなくて、孫悟空のもじりの名前に
するべきだったのでは?と思ったし、この中途半端なリンクのさせ方に意味が
あるのかよくわからなかった。三人が目指す『先生』は三蔵法師?お釈迦様?
世界で起きる不幸の原因が人工知能ってのも、さすがに無理がないかな・・・
と思ってたら、原因は全く別のところにあったという。そっちはそっちで、
なかなか荒唐無稽な展開でしたね。アダムとイブ、人類創造まで世界が広がって
行く・・・ページ数の割に、物語が壮大で、ちょっと戸惑いました。絵本体裁
だからこそ、簡潔な文章の中に壮大な物語を忍ばせることができるとも云える
のかもしれないけどね。
アレが意思を持っているという設定読んで、日渡早紀先生のあの名作漫画
『僕の地球を守って』の月基地の設定を思い出しました(わかる人だけわかって
ください・・・智さーん←名指しすな^^;)。
伊坂ファンでも、受け入れる人と戸惑う人、二分しそう。伊坂さんらしいといえば、
伊坂さんらしさは十二分にあるんじゃないかな。私はちょっと、喰い足りなさを
感じましたけどね。
※追記
この記事アップした後、よくよく考えて見たら、孫悟空→ごくう→59→五十九彦
なんですね。ごじゅうくひこって何だよって思って、全然悟空に結びついて
なかった(恥)。伊坂さん、ごめんなさい^^;;