ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

町田そのこ「月とアマリリス」(小学館)

町田さん新刊。といっても、人気あるので回って来るまで大分かかっちゃったけど。

実は、これの一つ前の『ドヴォルザークに染まるころ』は、一度回って来ていた

のに、取り置き期限を一日勘違いしていて、借り逃してしまったんですよね^^;

仕方がないのでもう一度予約し直して、未だに回って来てませんが(アホすぎる)。

こちらはちゃんと借りられて良かったです(笑)。

今回は、かなり重めの殺人事件が絡むミステリー。冒頭でなかなかにショッキング

なシーンが出て来ます。

じっくり事件を追って行く形なので、前半はなかなかノレなかったですね。どうして

冒頭の場面に至ったのか、その過程をタウン誌のライターである主人公が取材して

行く形なのですが。いろんな登場人物が入れ替わりで登場するから、時々この人

誰だったっけ?状態になって、結構混乱しました。名字しか出て来なかったりする

から・・・人の名前覚えるの苦手なのよね(言い訳)。

ことの発端は、北九州の高蔵山の山中で白骨化した遺体が発見されたところから

始まります。遺体には外傷はなく、なぜか花束のようなものが一緒に植えられて

いて、遺体の衣服のポケットからは、『ありがとう。ごめんね。みちる』と書かれた

メモが入っていた。曰くありげなこの遺体を取材してみないかと元上司から

打診された地方タウン誌のライター飯塚みちるは、一度は断ったものの、最終的

には事件を追う決意をする。みちるは、以前ある事件がきっかけで週刊誌記者を

辞めた過去があった。事件を追って行くうちに、みちるは意外な事実を次々と

知ることになり――。

先述したように、前半はなかなか物語が進まなくて、なかなか読み進められない

こともあったのですが(町田さんの作品にしては珍しい)、後半になるにつれて

ぐいぐい引き付けられて行くようになりました。ただ、事件の真相が明るみに

出てからがまたちょっと長くて。町田さんが本当に書きたかったのは、多分その

部分なんだろうとは思うけどさ。ミステリ好きからすると、事件の真相がわかって

からその後をだらだら書かれるのって、どうしてもちょっと蛇足に思えちゃう

んですよね。数ページ位ならいいんですけど。結構なページ数割いてるんで・・・。

 

あと、みちるの調査が進む原因が、ほぼほぼ偶然に頼りすぎてるのもちょっと

ご都合主義的に感じましたね。一度くらいならいいんだけど、随所でラッキー

が飛び込んで来るんで・・・^^;さすがに都合良すぎない?って疑問に感じて

しまった。必然と偶然の塩梅ってあると思うんですよね。フィクションだとしても。

そこのバランスがちょっと悪くて、リアリティがなかったかな、と思いました。

 

 

以下、ラストに触れています。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

みちるが、週刊誌の記者を辞めて、この事件の記事を上げた後久しぶりに会社に

戻って、会社側も歓迎してくれたのにまた辞めるって言い出して、そうかと

思ったら宗次郎(元上司)の説得でまたその意志が覆って・・・って、振り回し

過ぎでは?と思ってしまった。

宗次郎のキャラが結構ブレブレで、一体この人何がやりたいんだろ、と思ったな。

みちるのことを買ってて、戻って来て欲しいって思ってるのが明らかなのに、

めっちゃ厳しい態度ばっかり取ってるし。素直に未練あるって言えよ!って言い

たくなった(笑)。

代行タクシー運転手の井口のキャラは好きだったけど、案の定な性的マイノリティー

キャラで。町田さんの作品では、こういうキャラを出さないと気がすまないって

感じなのかなぁ。あと、親との関係がこじれてる人間。虐待だったり、無関心

だったり、過干渉だったり、いろいろなケースが出て来るけど。みちるは比較的

温かい家庭に育っているけど、両親は男尊女卑的な考えをする人たちで、兄との

対応の違いに苦しんでいるしね。

みちると美散の交流の部分は好きでしたね。みちるが諦めずに美散に手紙を

出し続けたことで、彼女の頑なな気持ちが変化していくところにぐっと来ました。

小学校の時の卓球のエピソードもそうだけど、この二人の中には、何か見えない

心の繋がりみたいなものが存在するんでしょうね。見た目は全然違うだろうけど、

似てるところがあるのかな。

あと、井口とアパートの大家の長野さんが知らない間に仲良くなってるのも

面白かったな。長野さん、自分のアパートであんな事件があったら、普通もっと

迷惑に思うと思うんだけど、根っから人がいいんだろうなぁと思いましたね。

それしても、すべての諸悪の根源である家原のクズっぷりは凄まじかったですね。

こんな奴に目をつけられてしまったことが悲劇の始まりだったんでしょうね・・・。

美散も乃愛も、共依存の関係だったとしか言いようがない。でも、現実にこういう

事件、起こりそうだな、とすごくリアルに感じました。

小学生の時みちるをいじめていた吉永に関しては、久しぶりに再会した時の

あっけらかんとした態度に腸が煮えくり返る思いがしたんだけど・・・その後に

明らかになった、いじめが始まった原因となったみちるの発言を聞いて、そういう

経緯があったのか、と腑に落ちるものがありました。結局、言われた方は覚えて

いても、何気なく悪気もなく言った言葉って、言った方は忘れちゃうんですよね

・・・。言葉って、救いにも、暴力にもなる。使い方には気をつけないといけない

な、と改めて感じさせられましたね。

結局、家原はどんな罪に問われるんでしょうね。美散については言及がありました

けど・・・家原については裁判が長引いているのか、書かれていなかったような

(単に読み落としかもですが)。厳罰に処して欲しいなぁ。いろんな人の人生を

狂わせたのだから。結婚詐欺師って、こういうタイプのサイコパスみたいな奴が

多いんだろうな、と思いましたね。天誅が下って欲しい。でも、逮捕された

ところで、きっと死ぬまで反省なんかしないのでしょうね。

 

重い事件でしたが、最後は少し救いのあるシーンで終わって良かったです。

みちるの姪の未来ちゃんは、このまままっすぐ育って欲しいな。

タイトルのアマリリスの意味はわかったけど、月って一体どこから来たのかな?

またしても、読み逃したかな^^;