
読み逃していた町田作品。というのもですね、最新作の記事にも少し触れたのですが、
この作品、新刊時に予約した時、ようやく回って来たって時に、予約期限を一日
間違えていて、借りそこなってしまったんですよ。予約本ラッシュ時で、結構
予約期限ギリギリまで待っていたらば・・・の悲劇。仕方ないのでもう一度
予約しなおして、ようやく借りられたという次第。出たの去年ですもんねぇ。
でも、二度目の割には思ったよりも早く回って来たって感じかな~。
大まかな内容は、廃校が決まった地方のある小学校での、最後の秋祭りの一日を
いろんな人物の視点から語った群像小説って感じです。参加者たちは、様々な
思惑を抱えている。過去の記憶と現代のそれぞれの立場から、いろんな複雑な思いが
交錯して行きます。ある人物の視点ではこう見えた事柄が、他の人物の視点から
見るとまた違って来たり。登場人物が多くて人物関係がいろいろ混み合っている
ので、ちょっと混乱しながら読んでた感じです。人物相関図欲しいよなぁと思い
ました^^;いろんな人の視点から語られる分、それぞれのキャラ造形もブレがある
印象あったし(人によってその人に対する見方が違っていたりするからね)。
町田さんだからリーダビリティあって、退屈とかそういうのは全然ないのですが。
でも、基本的に彼らの言動には共感できる要素がほとんどなく、嫌悪感を覚える
人物ばかりだったなぁ。過疎化が進んだ、地方の小さな町が舞台ということもあり、
まだまだ男尊女卑の考えが根強く残っている土地が舞台だからというも大きい。
男性優位の考え方で、女性の意見はなかなか通らないし、女性側もそれを仕方ないと
諦めて従っている。都市部では考えられないような男社会。男たちの女性を蔑む
ような考え方にはイライラするばかりでした。一話目の主人公の類に対する夫の
態度とか酷かったもんなぁ。義両親も同じ考え方だから、誰も味方になってくれる
人もいなくて。稼いでくるのは男なんだから、女が家のことをするのは当然って
感じで、類のやりたいことは何ひとつ認めてもらえなくて。今世の中で叫ばれて
いる、男女平等なんて考えは、こういう旧態依然の社会では通用しないんだろうな。
こういう人たちって、女性が首相になったら、どう思うんだろうね。女が国を
統べるなんて、世も末だとでも嘆くんだろうか。
東京に出て行った人間も、祭りの為に帰省すれば、やっぱりかつて住んだ町の
空気に逆戻りしてしまうし。育った環境ってやっぱり人格形成に需要なんだろうな、
と思わされたりしましたね。
二話目の主人公は、かなた町出身だが現在は東京で看護士をしている千紗。
バツイチ子持ちの恋人がいる。その恋人が、娘が結婚することになって結婚式に
出席する為旅立ってしまう。寂しさを紛らわす為、かなた町の祭りがあることを
知った千紗は故郷に戻って来るが。一緒について来たサチの正体は全然わかって
なかったな。千紗の寂しさを全くわからず娘の結婚式の写真を嬉々として送って
来る恋人(おっさん)にイライラしました。人の気持ちを考えろよ。とはいえ、
千紗だって類に対する対抗意識から、彼女の夫と浮気したんだから、因果応報
ともいえる訳で。小学生時代の、類との劇の主役交代のことは可哀想だったけどさ。
三話目の主人公は、夫とのセックスレスに悩む管理栄養士の佳代。息子のいじめを
きっかけに、博多から、夫の祖父母の土地があるかなた町に引っ越して来た。
認知症の義母が祭りに参加したいと主張した為、つきそいで祭りを訪れるのだが。
義母の佳代への言葉は、認知症とは思えない深い思いやりが感じられましたね。
この男尊女卑の地で辛い思いをしてきたからこその、佳代へのアドバイスだと
思いました。しっかり夫にノーをつきつけて欲しいですね。
四話目の主人公は、離婚して自分を捨てたと思っていた母親が突然眼の前に現れ、
これからは一緒に暮らすと言って来たことに戸惑いを覚える小学六年生の麦。
なんか、母親も父親も全然麦の気持ちを考えてあげてないことに腹が立ちました。
自分たちの都合だけで振り回される子供が可哀想だ。とはいえ、親だって一人の
人間なわけで、いろんな事情があるのは仕方がないのだけれど。せめて、父親か
祖母、どちらかがもっと麦のことをかわいがってあげられる性格だったら、麦の
人生ももう少し変わっていたような気がする。世の中には、自分の子供でもうまく
可愛がれないタイプの人がいるんですよね。だからといって、愛がないわけじゃ
なかったと思うけれども。母親の言い分も大分身勝手だとは思ったけれど、麦の
ことを愛しているのは間違いないのだろうから、これからはたっぷり愛情を注いで
もらって欲しいです。
五話目の主人公は、発達障害の娘を一人で育てる三好。秋祭りで、派手な身なりの、
カメラで動画を撮っている若い女性に声をかけられる。彼女は、昔この小学校の
教師をしていて、生徒の指導に来ていた画家と駆け落ちしたことで話題になった
女教師の知りあいだった――。一話目に出てきた群先生のその後が明らかになります。
こんな田舎町で、生徒たちを捨てて画家と駆け落ちって、なかなかすごい人生だな
って思いますが。閉塞感に耐えられなかったんだろうなぁ。学校でアレをしちゃう
ってのはまずかったと思うけど・・・教師の倫理観どこいった?失踪後は、山あり
谷ありの人生だったんだろうな。最後は穏やかであってほしいけども。
一話目のラストの、類と香坂の行動のその後も描かれます。いやー、まさかの
結末に唖然。っていうか、香坂のキャラ、完全に見誤ってたなぁ。こんな人間
だったとは(呆)。メッキが剥がれたとでもいいましょうか。いろいろ、ガッカリ
だった。
類は目が冷めて良かったのかも。とはいえ、夫にはちゃんと反省して欲しいし、
彼女は彼女で、自分の主張をちゃんと夫に伝えなきゃ今後も同じことの繰り返し
だろうな、とも思いますけどね。
夕方に流れるあの音楽、『遠き山に日は落ちて』のタイトルの方が有名だと
思うんですが。あれがドヴォルザークの作曲だって認識してる人ってなかなか
いないような。あの音楽を、主人公たちがみんなドヴォルザークが流れるって
言い方してたのがちょっと引っかかたんですけどね。小学校によっては、そう
教えるところもあるのかもですが。
日中の賑やかな祭りの喧騒に反して、祭りが終わったあと、ドヴォルザークが
流れる中、登場人物たちがそれぞれの思いを抱えて、暮れ行く夕日を眺めるシーンが
印象的でした。思い出の学校が終わって行くのと同時に、それぞれの主人公たちの
中でも何かが終わった瞬間であるかのように思えました。町田さんの叙情的な
描写力が光っていたと思います。
秋祭りのたった一日の中で、これだけのドラマがあるっていうのがすごいですね。
人間は、みんな主役で脇役なのよね。それぞれのドラマがあって、いろんな
思いを抱えて生きている。いろんな人の人間らしい悲喜こもごもが、リアルに
描かれている作品だと思いました。