ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

燃え殻「この味もまたいつか恋しくなる」(主婦と生活社)

燃え殻さんの新作エッセイ。今回は、食べ物にまつわる思い出を綴ったエッセイ。

いろんな思い出の味が出てきて、しんみりしたり、くすりと笑えたり、切なく

なったり。燃え殻さんらしい、優しさと切なさが相まった、心に沁みるエッセイ

でしたね。やっぱり、燃え殻さんの文章が好きだなぁ。誰に対しても、いつも

少し傷ついてるんですよね。優しいが故に。そこが、多分燃え殻さんの思い出

の中で、少しの疼きとなって残っている。でも、そうした疼きが積み重なって、

今の燃え殻さんになっているのがわかる。

冒頭の、行きつけの喫茶店のマスターの浅煎り珈琲の話から、ぐっと胸に刺さり

ました。つい昨日まで普通にしゃべってて、珈琲淹れてくれていた人がいなくなって

しまうやりきれなさ。でも、マスターのツッコミどころ満載の日記に、ほっこり

させられると同時に、胸が締めつけられるような気持ちになりました。

あとは、やっぱり印象的なのは、家族が出て来るエッセイですね。みんな、いい

キャラ過ぎて・・・だからこそ、切ない。特に、母親が出て来る回は、読むのが

しんどくなるくらい、切なくて、温かい。思い出の中のお母さん、素敵な人

過ぎて、終盤に出て来る現在の現状を知って、気持ちが沈みました。自分がどんなに

しんどい時でも、燃え殻さんの心配ばかりする姿が切なすぎて。母親ってそういう

もん、かもしれないけど、でも、そうじゃない母親だっていっぱいいる。燃え殻

さんのお母さんは、もう、典型的な子どもを守るためだけに存在してますって

感じの、母親で。燃え殻さんのことを、ずっと心配し続けて、これまで生きてきた

んだろうなって思えて、泣けて来た。

前に、おじいさんのエピソードを書かれたエッセイ読んだ時もすごく感動したん

だけど、おばあさんもめちゃくちゃ素敵な人だった。どんなことも褒めてくれる人。

自分に自信がない子どもにとって、褒めてくれる人がいるのといないのとでは

多分、人格形成が全く変わって来るんじゃないかな。幼い燃え殻さんの味方に

なってくれる人がそばにいてくれて良かったと思う。

食べ物の味や匂いを思い出すことで、当時の記憶も蘇って来る。結構あるあるだと

思う。プルーストも、マドレーヌの味と匂いで記憶が呼び覚まされるシーンを

描いているしね。食べ物って、過去の記憶と結びつきやすいですよね。私にも、

思い出の味とか匂いってあるもの。子どもの頃の食べ物の記憶というと、一番

覚えているのは、田舎のおばあちゃんの味噌おにぎりだな~。当時まだあった

土間で、田舎のおばあちゃんが味噌をつけてやいたおにぎりを食べさせてくれ

たのがすごく記憶に残っていて。美味しかったんだよね。もう二度と食べられ

ないと思うと、やっぱり恋しくなるね。燃え殻さんの記憶の食べ物たちも、

きっとみんなそうなんだろうな。まぁ、食べようと思えば今でも食べられるものも

あるけどね。閉店してしまったお店のものも多かったし、作ってくれた人が

亡くなっているケースもあるので。

今回も、何度も心を打ち抜かれるエッセイでした。面白かったです。