ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「クスノキの女神」(実業之日本社)

ようやっと回って来たクスノキの番人』の続編。発売日見たら、昨年の6月。

一年以上かかったのか~。東野さんは予約に乗り遅れるとこうなっちゃうのよね^^;

確かもうそろそろ新刊が出るはずだから、今度は発売日に予約せねば・・・!

月郷神社の霊木であるクスノキの番人を引き継いだ玲斗は、二ヶ月前までは神社の

社務所に寝泊まりして仕事をこなしていたが、伯母の千舟が軽度認知症を患い、

その進行が確実に進んでいることから、千舟の住む柳澤家の屋敷に一緒に住むこと

になった。食事も作ってもらえるし、風呂も毎日入れて、千舟との同居は思いの外

快適だった。しかし、月に何度かはクスノキの番人の仕事が入り、社務所に寝泊まり

していた。そんなある日、神社に早川由紀奈という女子高生が、月郷神社のクスノキ

を題材にして書いた詩集を神社におかせて欲しいと言って来た。一度は断ったものの、

頼み込まれて仕方なく置いてやると、ある日その詩集を盗もうとする男がやって来て

――。

ミステリ要素はほぼなく、感動系の東野作品。千舟さんって、前作でも軽度認知症

の症状ありましたっけ?すっかり忘れてました・・・。聡明な千舟さんと玲斗の

関係がとても好きだったから、ちょっとショックだった。作中内でも、少しづつ

千舟さんの症状が進行して行くのが切なくて。ただ、その千舟さんの認知症

きっかけで、認知症カフェに行って記憶障害の少年・元哉と出会い、彼と由紀奈とを

出会わせることが出来たのですけども・・・。認知症カフェなるものは現実にも

存在するのでしょうか。症状の軽い認知症患者たちが集まって情報交換する場だそう

な。そこに記憶障害を患う元哉も母親と参加していました。元哉の障害は、『博士の

愛した数式』とか掟上今日子シリーズの掟上さんとかで有名なやつですよね(博士

の方は知識として知ってるだけだし、掟上さんの方はドラマ何回か観たことある

だけなので、一緒くたに出来るものではないかもしれませんが)。元哉の場合は、

一晩眠ると記憶がリセットされてしまうという障害。どんなに楽しい記憶も、

どんなに辛い記憶も、一晩経てばすべて忘れてしまう・・・辛い記憶は早く

忘れたいと思うけど・・・でも、覚えていたいこともすべて忘れてしまうって、

切ないな。しかもあんなにまだ若いのに。『明日の僕へ』と題した、翌日の自分に

宛てた元哉の日記にやりきれない気持ちになりました。そんな元哉を何かと気遣う

玲斗の思いやりに心が温まりましたね。前作では、自暴自棄になって窃盗犯で

捕まるくらいのクズっぷりだったのに(今回も千舟さんに何度かそのことを

ディスられていたw)。成長したなぁ・・・。由紀奈のこともそうだけどさ。

でも、彼女の秘密に口を噤んだことは、倫理的にはどうなのかなって思ったけども。

元哉との絵本のこともあったし、彼女自身に情が移ってもいたのでしょうね。

 

以下ラストに言及しています。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終盤の展開には胸が締め付けられる気持ちになりました。最後、元哉が幸せな

気持ちになれたのなら良かったのかな・・・。病気だけは誰にもどうすることも

出来ないけど、せめて人生最良の日を過ごすことが出来て、そのことを翌日以降の

『僕』に伝えることが出来たのだから・・・とはいえ、やっぱりやりきれない

気持ちになりましたけどね。祈念の日に、元哉の父親がやろうとしたことには、

ただただ腹が立ちました。離れてたくせに、勝手に元哉の人生決めようとするなよ!

って言いたくなりました。まぁ、そんな小細工必要ない結末になってしまいました

けどね・・・。

 

二人の絵本が一人でも多くの人に読んでもらえるといいなと思います。絵本が

有名になったら、クスノキのことも有名になっちゃいそうで、それはそれで

問題がありそうですけどね・・・(クスノキの祈念のことは他言無用の筈なので)。

最後の千舟さんとの会話が切なすぎたな。子どもみたいな千舟さんは可愛らし

かったけど・・・それだけに、胸が痛かったです。こころをぎゅーっと持って

行かれるラストでしたね。

絵本のラストに込められたメッセージも泣けました。5年後10年後の未来

よりも、今生きていることに意味がある。由紀奈から記憶障害を持ち、未来に

希望がモテない元哉に向けた渾身のメッセージだったんじゃないかなと思いました。

作中作のこの絵本、実際に書籍化されているそうで、図書館検索したらそこまで

予約数も多くなかったので、早速予約しておきました。回って来るの楽しみです。