ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小路幸也「ザ・ネバーエンディング・ストーリー 東京バンドワゴン」(集英社)

シリーズ第20弾。一年に一作だから、やっと20作か~って感じもします。

一年に一度会える親戚、みたいなシリーズです(しゃばけシリーズもそう)。

ただ、今回は番外編的な作品。普段シリーズ本編では名前しか出て来ることのない、

我南人さんの亡き愛妻・秋実さんが語り手を努めます。という訳で、舞台は現代

から少し遡って、昭和60年(1985年)。秋実が溺愛する次男坊で、幼稚園児の

青は、最近蔵に籠もってある絵本を読むのにはまっていた。その本はイギリスの

稀覯本を翻訳した『不一魔女物語』。最近原書が3000万の値で日本人に落札

されて話題になっていた。この本を、最近世間を騒がせている古美術窃盗団が

狙っているとの情報を得た堀田家。しかも、その窃盗団に秋実の大事な幼馴染の

女性が関わっているらしいと知り、彼女を救うべく計画を建て始めるのだが――。

秋実さん視点は、なかなか新鮮でしたね~。いつもサチさん視点だからね。秋実

さんって、いくつで亡くなったのかな~。なんかいろいろ逸話があるみたいで、

秋実さんの若かりし頃に興味津々。って、どっかで既に出て来てるのかもしれない

けど、忘れちゃった。随分勇ましい武勇伝があるみたいで、めっちゃ気になりました。

スピンオフとかで当時のこととか出て来たのかなぁ。サチさんの若い頃の話を

読んだのは覚えてるんだけどね(勘一さんとの馴れ初めのやつ)。秋実さんって、

堀田家の会話の中でちらっと名前が出て来るくらいで、あんまりどんな人がイメージ

出来てなかったんだけど、思ってたのとはちょっと違ってたな。優しい人なのは

間違いないけど、結構芯のしっかりした強い人だったんだなーって印象。育った

児童養護施設で小さい子とかの面倒見てたから、お姉さん気質というかね。結構

気が強いところもあるって感じで。でも、我南人の浮気は許しちゃうんだなぁ。

よく考えると、青は不倫の果てに出来た子なわけで。あれだけ愛情を持って接する

ことができるのもすごいと思いましたね。我南人の奥さんが秋実さんじゃなかったら、

青はもっとひねくれた嫌な性格に育ったんじゃないかなぁ。紺や藍子という実の

子と全く分け隔てなく育ててあげて(むしろ、美しい末っ子ということで溺愛に

近いし)。青は堀田家で引き取ってほんと良かったと思うよ。

窃盗団を捕まえる計画に関しては、こんなんでうまく行くの!?って心配になり

ましたけど、すんなり計画通りうまく行っちゃうところが、このシリーズらしい。

他の作品だったら、もっと途中でトラブルに見舞われて、危険な目に遭って、あわや

計画倒れに、みたいな展開があると思うんだけどね^^;

秋実さんの幼馴染で窃盗団の一味にされてしまった美佐子ちゃん、あの状況で

ほとんど罪に問われないってのはいくらなんでもご都合主義過ぎないか?とは

思いましたが、まぁ、それもね。このシリーズの優しい世界の中の出来事だから、

ありだと思うしかないのかなぁ。大団円が基本だからさ。

今回も最後は我南人さんの『LOVEだねぇ』で無事完結。輸入バイクショップ

あの人が、最後にお礼として例のものを返してくれたのが嬉しかったですね。

ちゃんと、我南人さんのLOVEが伝わったってことですから。これからは真っ当に

生きようって頑張った証ですよね。

今回も大団円ですっきり読み終えられました。