ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

瀬尾まいこ「ありか」(水鈴社)

瀬尾さん最新刊。優しくも切ない、瀬尾さんらしい家族小説です。血は繋がって

いないけど、心は繋がっているっていうタイプの家族小説、瀬尾さんお好きな

題材ですよね。今回は、主人公とは血が繋がっていない義理の甥がキーパーソン

として出て来ますね。この颯斗君のキャラクターがとても良かったですね。いつ

いかなる時も、主人公の美空と彼女の娘・ひかりの味方になってくれる存在。

彼ら三人の関係性がとても好きでした。

若くして結婚した美空は、結婚生活二年と少しで離婚して、一人娘のひかりを

育てるシングルマザーになった。ひかりは何にも代えがたい愛おしい存在で、

彼女の為ならどんなことにも耐えられると思っていた。しかし、一人で子どもを

育てるのは、想像以上に大変だった。そんな二人の前に現れたのは、離婚した夫の

弟・颯斗だった。颯斗は、毎週水曜日に二人の部屋にやってきては、何くれと

なく世話を焼いてくれた。姪であるひかりを溺愛する颯斗の態度に戸惑いながらも、

少しづつその無償の好意を受け入れるようになる美空だったが、彼には何か自分たち

に隠している何かがありそうで――。

娘のひかりを一人で育てる美空の周りには、いい人がたくさん。義理の弟である

颯斗はもちろん、幼稚園のママ友である三池さんや、パート仲間の宮崎さんの

押し付けがましくない好意にもぐっと来ました。母親として自信のない美空を、

彼らの優しさでどんどん強くして行ってあげている感じがしました。

その反面、美空の母親の毒親っぷりには腹が立って仕方がなかったです。一人で

養育費ももらわず子どもを育てる美空に対して、お金の無心をしてくる空気の

読めなさと図々しさには呆れ果てました。自分だって一人で子育てしてきたの

だから、どれだけ子どもを女手一つで育てるのが大変かはわかっているだろうに。

それを、育ててやったのだからその分見返りをくれるべき、みたいな考え方で

いるところに唖然としましたね。まぁ、世の中には、自分の子どもだからって

無条件に愛せる人ばかりではないってことはわかっているけれど。それでも、

妊娠して、産むと決めたのは自分の筈なのに。母親の言動には、いちいちムカついて

仕方なかったです。特に、ひかりの入院のことを聞いた時の態度は酷かったですね。

私も、あの母親の言葉を聞いて、美空と同じように許せない、と思いました。

美空が、はっきり母親に自分の思いをぶつけてくれて、スカッとしました。残念

ながら、相手には全然刺さってなかったみたいですけど(呆)。

美空とひかりの会話は、全部が癒やしでしたね~。ひかりちゃん、ほんっとに

可愛くて健気でいい子。それは、全部美空の育て方が良かったから。美空は、

もっと自分の子育てに自信もってほしいと思いました。周りの人に恵まれたせいも

あるでしょうけどね(毒母が、ほとんどひかりに興味なくて良かった!!!)。

どんなに邪険に扱われても、自分の母親だからと見捨てられない美空の代わりに、

毒母を、『あのクソババア』と斬り捨てた颯斗がいてくれたのも良かった。他人の

母親を『クソババア』扱いするのはいかがなものかと思わなくもなかったけど、

あのどうしようもない毒親に対してだから、かえって痛快だったしね。

最後、美空もちゃんと、母親に対して言いたいことが言えて良かったです。なんだ

かんだで、切り捨てたつもりでも、ほそぼそと縁は繋がって行くんだろうし、

相手に何かあったら全力で助けてあげようとするのが美空なんだろうけどね。

颯斗に関しては、私も何か絶対ありそうだなぁと思っていたので、最後の展開には

ハラハラさせられました。見つかって良かった・・・!!颯斗の孤独をわかって

あげられる美空がいて良かった、とも。これからも、血は繋がらなくても、家族の

一員として、ずっと仲良しの関係でいてほしいな。誕生日やクリスマスを一緒に

お祝いしたりね。一人じゃないって、わかっててほしいです。マイノリティは決して

悪いことじゃないってことも。

颯斗がなんであんなに美空たちに親切にするのか、その理由も終盤わかります。

私も、甥っ子姪っ子には結構甘甘なおばちゃんだったから、颯斗がひかりを

甘やかす気持ちにはなんか共感出来たなぁ。無責任に可愛がれるんだよね(苦笑)。

だからこそ、ひかりの父親で颯斗の兄、奏多が全然自分の子どもに関心がなさそう

なのがちょっと悲しかったです。自分の血を分けた子どもなのにね。養育費さえ

まともに払わないし。面会もしなくなっていって。責任感とか、かけらもないん

だろうなって思いましたね。美空は、もうちょっと奏多と戦うべきなんじゃない

のかと思いましたね。養育費は、ひかりの権利なのだから。ま、その分義理の

両親がいい人だから良かったですけどね。

あの両親から生まれたのに、なんで奏多はあんないい加減な奴に育ったんです

かねぇ・・・。そのいい加減さに、颯斗は救わたところもあるんだろうけどさ。

美空の、ひかりへの無償の愛と優しさに、なんども胸がいっぱいになりました。

美空は、自分では自信がないって言ってるけど、十分いい母親です。読み終えて、

これからこの親子にいいことがいっぱい起きますように、と願う自分がいました。

タイトルは、幸せの「ありか」とか、そういう意味なのかな。自分のありか、とか。

美空のありかは、もちろんひかりがすぐそばにいる、いまいる場所に他ならない

のでしょうね。

瀬尾さんらしい、素敵な親子の物語でした。