
昆虫探偵(?)魞沢泉シリーズでお馴染みの櫻田さん最新ミステリー。帯で錚々たる
有名作家さんたちが大絶賛のコメントを寄せているので、読むのを楽しみにして
いました。というか、ネットで発売前に新刊情報記事を読んでいたので、発売日
に予約したんですが、待てども待てども予約が反映されず、やきもきさせられ
ました。結局、反映されるまでに3週間くらいかかったんじゃないかな?
東野さんとか伊坂さんとか人気作家だと3日くらいで反映されるのにー。てっきり
私が買わせた人かと思いきや、反映された予約は2番目でしたが^^;結構
話題になってるみたいで、反映されたらあれよあれよという間に予約数がはね
上がり、今は私の後ろに160人くらいいるみたいです。魞沢シリーズの時は
そんなに予約いなかったのにな~。
期待大で読み始めたものの、内容は至って王道の警察ミステリーでちょっと
拍子抜けしたところもありました。思ってたんと違う~と思いながら読み進め
て行きましたが、終盤、一見無関係に思えるいくつもの伏線がちゃんとひとつに
集約されていく過程は、やはり読み応えがありましたね。
あらすじをば。山奥で男性の遺体が発見された。遺体は、顔を潰され、歯を
抜かれ、手首から先が切断されており、徹底的に身元がわからないように損壊
されていた。J県警媛上警察署捜査係長の日野雪彦は、部下の入江文乃と共に
捜査に乗り出す。事件の報道後、生活安全課に一人の小学生が訪ねて来た。
少年は、発見された遺体が10年前に失踪した自分の父親かもしれないと言う
のだが――。
以下、ネタバレ気味感想となっております。
未読の方はご注意ください。
真相自体は、遺体が損壊された理由も含めて、割と王道の展開というか、そこまで
驚きがあったという訳ではなかったです。むしろ、ああ、やっぱりそういう理由か、
と思う人がほとんどじゃないのかなぁ。ただ、警察が(というか日野と入江が)
そこに気づく場面の伏線回収の仕方なんかが、とても上手い。入江が、被害者の
血液型を勘違いしていた理由とかね。ああ、あの場面か・・・!と目からウロコ
って感じでしたね。他にも、日野と同期の羽幌の何気ない行動が後に重要な意味を
持って来るとことか。あと、遺体の問い合わせにやってくる隼人少年が書いた詩
に隠された意外な事実とか。挙げて行くと、キリがないくらい、細かく細かく
伏線が張られてます。個人的には、直接事件とは関係ないんだけど、冒頭に出て
来た、日野の奥さんが夫の朝食に作ったソーセージ入りロール食パンの意味に
日野が気づくシーンが好きでした。冒頭の夫婦のやり取り読んでた時点では、
この夫婦大丈夫かな、とちょっと悲観的な目線で見ていたんだけどね。日野は
全然奥さんに対しての配慮がなかったから。でも、奥さんはちゃんと、警察官の
妻という自覚を持って夫に接しているんですよね。娘ですら、そのことをちゃんと
わかっているのに、日野だけが奥さんの愛情に気づいてなかったって言うね。
娘が真っすぐないい子に育っているのは、絶対奥さんの育て方がいいからでしょう。
夫に対する愚痴とか言わないんだろうなぁ。いろいろ、言いたいこともあるだろう
けどね。
どんでん返しの反転の部分は、正直もっと派手な反転があると身構えていた
ので・・・若干、肩透かしな印象はあったかも。予想出来た訳でもないんだけど、
遺体が徹底的に損壊されている理由としては、それくらいしか納得出来る
理由はないだろうな、って感じなので・・・。それよりは、そこに至るまでの経緯
というか、伏線収拾の巧さに感心したかな。
日野と羽幌、同期同士のやり取りとか関係性の部分は、長岡弘樹さんの教場シリーズ
に出て来そうだな、と思いましたね。お互いに腹に一物抱えてるみたいな感じ?
日野よりも、羽幌のキャラの方が個性強かったような。一匹狼っぽい羽幌のキャラ
は結構好きだった。
日野と入江の先輩後輩関係も良かったですね。入江さんは、上の人間にも物怖じ
しないタイプなのかな。日野にもずけずけと言いたいこと言っちゃってる感じ
だったしね。日野とはいいコンビなんじゃないかな。
真相が明るみに出ることで、ある人物の今後だけが心配になりました。一体、
この先どうやって生きていけばいいのか・・・。もちろん、面倒見ると言って
くれた人はいるのだけど。辛い現実と向き合わなければならず、いろんなことが
トラウマにならなければいいけれど。強く生きていって欲しいと願わずに
いられません。まぁ、羽幌も面倒見るでしょう。多分ね。
伊坂さん、恩田さん、米澤さんが大絶賛ということで、少々期待値が上がり過ぎた
感はありましたが、正統派の伏線回収ミステリーというのは間違いない。
今後も追いかけたい作家さんですね。