ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

王谷晶「ババヤガの夜」(河出文庫)

全く知らない作家さんだったのですが、ニュースで英国推理作家協会賞(ダガー賞)

を受賞した聞いて、気になったので予約してありました。賞を受賞されたという

ことで、単行本の方はとんでもない予約数だったのですが、文庫の方はまだ

それほどではなかったので、予約する気になったというのもあるのですが(こっち

も何百人待ちレベルだったら諦めてたw)。

いやー、面白かった。っていうか、実はですね、ミステリー系の賞を獲った

というのは知っていたものの、タイトルからファンタジーっぽい作品なのかと

思ってたんですよね。だって、ババヤガなんて言葉、聞いたことなかったんだもん。

というか、ババヤガなのかババガヤなのか、何度確かめても覚えられないのは

なぜなんだ(アホすぎるw)。

まさか、こんなバイオレンス系の作品だとは思わなかったです。しかも、結構

エグい表現がわんさかと。暴力系の作品が苦手な人は要注意かもしれないです。

特に、男性には耐え難い悍ましい描写のシーンがありますので・・・想像した

だけで、多分気絶しそうなレベルの・・・(ひー)。まぁ、平山(夢明)さん

に比べればね(免疫強っw)。

まぁ、簡単にあらすじ言っちゃうと、めちゃくちゃ強い女主人公の新道依子が、

腕を買われて極道の会長が溺愛する一人娘の美少女・内樹尚子の運転手兼

ボディガードになって、組のものやら、その他のいろんな敵とドンパチやるお話です。

タケシ辺りが映画化しそうな内容(笑)。

ラノベでも読んでるかの如くに読みやすい文章だし、ページ数も少ないから

あっという間に読み終わっちゃった。もちろん、内容自体にもぐいぐい引き付け

られたっていうのが大きいんだけどね。

最初反発し合ってた依子と尚子ですが、ちょっとづつ距離を縮めて行く感じが

良かったですね。依子のキャラクターは、なかなか他に類を見ないような強烈

な個性がありますね。ごっつい身体に不細工(作中の表現です)な顔で、

めっぽう喧嘩に強い。乱暴な性格だけど、犬には弱い(好きって意味で)。

反対に、守られる側の尚子は、ザ・お嬢様を絵に描いたようなか弱い美少女。

極道の娘とは思えない。正反対の二人の対比が上手いな、と思いましたね。

 

 

以下、ネタバレあります。未読の方はご注意を!

 

 

 

 

 

 

 

前半は暴力描写が多いので、ちょっと読むのがキツかったところもあるけど、

特筆すべきは、途中で明らかになる、あっと言わせる仕掛けの部分。世界が

反転しました。全く気づいてなかったです。なるほど、これは評価される

訳だ、と思わされましたね~。いやー、騙されたわ。

そこからの展開も、驚きの連続でしたしね。いや、確かにね、読んでる途中で、

お嬢さんの言動とか、一体いつの時代なんだよ、と時代背景を訝しんでいたりは

したのだけどね。前時代的な言葉遣いとかだしさ。服装もね。でも、まぁ、極道

の中で蝶よ花よと甘やかされて育って来てるからなのかな、くらいに思って

納得してたんですけどね。

よくもまぁ、40年も。お嬢さんの変貌っぷりにもびっくりだったけどさ。

意外と、強かだったのね。二人の逃亡劇の部分も、もっと掘り下げて読んで

みたいなぁ。二人の関係がどんな風に変化して行ったのかも知りたいしね。

ラストが切なすぎた。なんとなく、草彅くんの映画『ミッドナイトスワン』の

ラストを思い出して、胸が締めつけられるような気持ちになりました。悲しい。

これは、映像化されるだろうなぁ。内容的にも、ビジュアル的にもやりやすそう。

ただし、絶対映像化出来ないシーンもありますけどね。

短いながらも、読み応えのある作品だと思いましたね。面白かった。

確かに、内容的にもわかりやすいし、題材的にも外国受けしそうだと

思いましたね。受賞も納得でした。