ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

飛鳥部勝則「抹殺ゴスゴッズ」(早川書房)

本当に久しぶりの飛鳥部さんの新刊。『黒と愛』以来15年ぶりの新刊だそうな。

総ページ数648ページ。新刊情報ページで書名を見かけた時、ページ数に慄いた

ものの、あらすじ紹介見て、これは絶対読まねばならん、と即行で予約。一人待ち

だったので、割合すぐに回って来てしまって、読み切れるか不安だったのだけど、

なんとか読み終えられて良かった。7~8日くらいはかかったと思うけど。

長かった・・・けど、めちゃくちゃ面白かった。途中、中だるみっぽい部分がない

訳じゃないけど、一度も挫折したいとは思わなかったです。絶対読み切るぞ、

という気概まんまんで読んでました(笑)。

これぞ飛鳥部勝則!という作品だった・・・と述べれば、飛鳥部作品を知ってる

読者なら、どういう作品かはわかるはず。そう、究極の・・・

 

キワモノミステリ

 

でありました・・・。なんかもう、冒頭から結構めちゃくちゃな設定のオンパレード。

主人公高校生なのに、なんでこんなにイッちゃってるキャラクターばっかり出て

来るんだよぉぉ~~~と面くらいつつワクワクしながら(←?w)読み始め。

エログロ・暴力・拷問・SF・芸術・虫爆弾・冒険活劇・ミステリー、その他

もろもろ、ごっちゃ混ぜ。

よくもまぁ、こんな設定思いつくよなぁ・・・と感心+呆れながらもぐいぐい

物語は進んで行く。正直ね、気持ち悪い描写いっぱい出て来て、気が遠くなりかけた

場面も山程あります。間違いなく、読者選びます。でも、好きな人はこれがもう、

たまらん~~~って感じになると思います。これぞ、飛鳥部ワールド!と喜べる人

のみ、読んで欲しい。いや、そういう人は、絶対読むべき。それ以外の人には、

お薦めしませんけどね(苦笑)。

 

基本的には、令和パートと平成パートが交互に出て来る構成。令和パートの主人公

は高校生の利根詩郎。友人の木槍聖夜と共に編み出した、空想の怪神コドクオが

なぜか彼らがピンチに陥ると現れ、暗躍する。コドクオの正体とは一体何なのか。

一方平成パートの主人公は、詩郎の父・正也が高校生の頃に友人の神門孝一と共に

巻き込まれた殺人事件の顛末が描かれます。この事件の背後には、蠱毒王と名乗る

不審人物が事件を操っていた。蠱毒王の正体とは?

現代のコドクオと平成の蠱毒王。両者には一体何のつながりがあるのか。

 

以下、ネタバレあります。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一見、何の繋がりがあるのか全く見えなかった(利根親子が関わっているという

共通点はありますが)二つの事件が、最後まで読むとちゃんと繋がって行きます。

令和版に出て来た空想の怪神かと思われたコドクオに関しても、ちゃんと論理的

な説明がされて、すっきりしました。なるほど、そういうことだったのねっていう。

一見、とても説明が出来ないであろう事象にも、きちんと説明がつくところがすごい。

計算された物語なんだなぁと思わされましたね。不可解な殺人事件に関してもそれは

同じ。清水キセと神門大善殺しの犯人には驚かされた。っていうか、犯人出て来た時、

これ、誰だったっけ?状態だった^^;完全に途中から消えてた存在だったから。

でも、前に戻って読み返してみると、きっちり伏線は張ってあるのに来づけると思う。

動機にはずっこけたけど・・・確かに、その人物の発言を注意深く読むと、そういう

ことか、と思える言動してるんですよね。まぁ、サイコパスなのは間違いないで

しょうけど・・・。このイカれた思考に一番戦慄したかも。

あと、重要な人物があっさり死んじゃったりするんで、結構ショックだったりする

んだけど、最終的には、そこで退場させたのには、退場させるなりの理由があった

ことがわかって溜飲が下がったりしました。本当の善人は、きちんと最後まで

生き残るから。一人だけ例外がいるけど・・・。

 

令和パートでも平成パートでも、金山の坑道内のシーンは、インディ・ジョーンズ

ばりの冒険活劇っぽくて楽しかったですね。個人的に、洞窟フェチなもので。

洞窟系のシーンが出て来るだけで興奮しちゃう(笑)。お宝が眠る場所までついて

て、サービス満点。虫のシーンとか地獄絵図のシーンとかは勘弁してほしかった

けど^^;

最後に明らかになる、ルーベンスの例の絵の所在には驚かされた。しかし、確かに、

個人の手に負える作品じゃないよなぁ・・・。詩郎は、ちゃんと本来あるべき

場所に戻したと思いますね。

 

詩郎の想い人であるカナヨが最後あっさり退場したのはちょっと驚いた。聖夜とは

どうなったんだろ。カナヨも聖夜も、心の底では詩郎を想っているのでは、とか

勘ぐっていたりしたんだけどな。カナヨはともかく、聖夜の方は当たっているかも

しれないけど。

飛鳥部作品のいいところは、こんなにグロくてハチャメチャな作品なのに、最後は

ちゃんと、高校生らしい青春が描かれるところなんですよ。木槍とのラストも

心を打たれたけど、それ以上に桜とのラストシーンにすべて持っていかれた。

桜は美少女だけど、イカれた変態としか思えなかったから、彼女が詩郎を好きに

なったきっかけが知れたのも嬉しかった(意外と普通というか、まともで、違う意味で

面食らわされたけどw)。

二人が再会したら、また新しい物語が始まりそうです。素晴らしいラストシーンだと

思いました。

 

いろいろと消化出来てない部分もたくさん残ってる気がしなくもないんだけど、

トータルでは大満足。お腹いっぱい。

個人的には、大好きだった『堕天使拷問刑』に並ぶ怪作だと思いました。

この記事を書くに当たってネット検索して知ったのだけど、この作品はゴシック

復興四部作のうちの最後の一作という位置づけなのだそう。

『鏡陥穽』『堕天使拷問刑』『黒と愛』そしてこの『抹殺ゴスゴッズ』。

『鏡陥穽』は未読なので、いつか読まなくては。