ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

伏尾美紀「百年の時効」(幻冬舎)

初めましての作家さん。新聞広告であらすじを見て、面白そうだなーと思って

予約しました。昭和に起きた未解決の一家惨殺事件を巡る重厚な警察ミステリー。

昭和、平成、令和にわたり、四人の刑事が事件の捜査を引き継いで行く。

いやー、読み応えありましたね。総ページ数は553ページ。横山(秀夫)さんや

薬丸(岳)さんや奥田(英朗)さん辺りが書きそうな、重厚な警察ミステリー。

登場人物も多いし、人間関係も複雑だし、歴史的背景も関わって来るものだから、

ストーリーを追って行くのは結構大変だった。全部は把握しきれてないなぁ・・・。

読むのに時間もかかってるから、最初の方の設定とかすぐ忘れちゃうしさ(アホ

すぎる・・・^^;)。ただ、一つ救いなのは、冒頭に登場人物紹介がわかりやすい

形で紹介されているところ。何度か前に戻って確認しながら読んでましたね。

メインの殺人事件はもちろんフィクションだと思いますが、同じ時期に実際に起きた

事件も要所要所で出て来るので、リアリティがありましたね。作者は、相当当時の

歴史的事情を取材されたのではないでしょうか。途中でオウムの地下鉄サリン事件

が起きて、そちらの捜査に人員が割かれたせいで、事件の捜査が縮小され

ちゃったりね。後、裏で手を引いている人物が大物で、警察に圧力がかかったり。

いろんな横槍のせいで、事件解決までに50年もかかってしまった、と。その辺りの

書き方も上手かったですね。ただ、事件を担当した刑事たちが、みんな事件の

解決を諦めなかったことで、自分が力尽きても、次の世代に捜査資料が受け継がれて

行く。彼らの執念には頭が下がりました。ひとつの事件の解決に、これだけの

長い年月がかかるというのもなかなかないのでは・・・とか思いながら読んで

た訳なのですが、そこに飛び込んで来たのが、26年前の主婦殺害事件の解決の

ニュース。被害者の旦那さんが、事件を解決させる為に当時の部屋をそのまま

保存しておいたという話を耳にして、事実は小説より奇なり、という言葉そのまま

だな、と思わされました。あの事件も、きっと旦那さんの気持ちを汲み取って、

執念で捜査してきた刑事さんがいたんだろうな、と。

暴力団系も背後に絡んでいるので、事件の関係者が次々消されて行くところにも

肝を冷やされました。人死にすぎ・・・。

メインの一家四人惨殺事件の真相は、かなり込み入っています。母親を殺した

犯人は驚かされましたね。ただ、冒頭に出て来た殺害直前のシーンで、絶対

伏線だろうな、と思った部分が、やはり事件の真相のヒントになっていました。

でも、これは予想出来る人ほとんどいないんじゃないか?この真相に気づいた

女刑事の藤森さんの慧眼には恐れ入りましたね。しかし、乱歩の小説かよ!って

ツッコミ入れたくなる真相でもありましたけどね^^;

途中、犯人たちの満州鉄道時代の話なんかも出て来るので、歴史的考察の部分は

ちょっと読むのがしんどかったところもありました。歴史小説苦手なもので^^;

ただ、時代背景として重要な部分でもあるので、中だるみとは思わなかった

ですけどね。とても丁寧に、ひとつひとつの時代背景が描かれていて、昭和の

時代や平成の時代を懐かしく思い出しながら読めました。そういえば、こんな

事件あったな、とか。日本の犯罪史に残る凶悪犯罪も出て来ますしね。改めて、

酷い事件だったな、と思い返したり。

事件を受け継いで行く四人の刑事さんのキャラクターもそれぞれに個性があって

良かったと思います。残念なのは、最初に担当した鎌田が事件解決の瞬間に

立ち会えずに亡くなってしまったこと(これは作品の冒頭で明らかになるので、

ネタバレではないかと)。無念だったでしょうね・・・。あと少しだったのにな。

あの世から、よくやったと微笑んでいるかもしれませんけどね。

とにかく、読み応え十分の警察ミステリーでした。細かい伏線回収もお見事

でしたね。

これも今年のミステリランキングに入りそうだなぁ。