
読書初心者に向けた、ジャンルに特化したアンソロジーシリーズだそうな。今回の
テーマは<ミステリ>。四人の作家が、『フーダニット』『ハウダニット』
『ホワイダニット』『叙述トリック』というお題に沿って、作品を書き下ろした
ものを収録。
寄稿作家さんが好きな作家さんばかりだったので手に取ってみました。三作目に
収録されている秋木さんだけ未読の作家さんでしたが。対象読者が初心者という
ことで、各作家さん、読みやすさも重視されているのかな、と感じました。
手軽に手に取れる感じ。主人公はみんな学生ですしね。キャラクターが良いので、
シリーズ化して続編読んでみたくなるものばかりでした。
では、各作品の感想を。
青柳碧人『ヤンキー、ミステリと出会う ~俺とあいつと、さしすせそ』
ホワイダニットがテーマ。なぜ犯人が事件を起こしたのかを予想せよ、という
副題(?)がついてます。主人公はミステリなんか読んだこともないヤンキー
少年、法蓮虎矢。市内で、クリスティのABC殺人事件をなぞったような連続
障害事件が起き、巻き込まれてしまう。なぜ犯人はこんな事件を起こしたのか?
ミステリオタクの三田村かなでちゃんのキャラがいいですね。虎矢君とはいい
コンビになりそう。人名や高校の名前がほとんど食べ物になってるのが面白い。
かなでちゃんを始め、当てはまらなそうな人もいたけど(私が気づいてない
だけ?^^;)。犯人が事件を起こした理由は、ミステリとしては初歩の初歩
みたいな理由でしたね。
秋木真『将棋部、無実を証明せよ』
フーダニットがテーマ。副題は、『誰が犯人なのか推理せよ』。
主人公は、高校の将棋部に入部している相沢蒼真。蒼真以外の唯一の部員・
橘司と放課後の部室で将棋を指していると、窓の外から紙吹雪が落ちて来るのに
気づく。紙吹雪の正体は写真で、一つ上の3階の写真部の部室から落ちて来て
いるらしい。蒼真は、司と二人、写真部を尋ねることに。
犯人候補は三人だけなので、推理はしやすいかも。ただ、犯人の目的と遂行する
ために窓から写真を撒くってのは、なんか回りくどくて、ちょっと腑に落ちない
気持ちになりましたね。犯人自体も、意外性ゼロでしたしね。
相沢沙呼『屋上の雪融け』
ハウダニットがテーマ。副題は『証拠を基にトリックを暴け』。
主人公は女子高生の斗真藍莉。兄の摂理は探偵事務所で探偵助手をしている。藍莉の
親友・佐藤優奈の伯父が、ある雪の日に、屋上から身を投げて亡くなった。
警察は自殺と見なしたが、優奈は伯父は殺されたのではないかという。藍莉は、
兄の探偵事務所に相談に行くことに。しかし、探偵の暁玄十朗は取り合って
くれない。腹を立てた藍莉は、兄と共に事件を調査することに。
藍莉と玄十朗の関係がなんかいいですね。兄も妹が可愛くて仕方ない感じが出て
てほっこりするし。雪密室のトリックはツッコミ所満載って感じだったけど^^;
玄十朗は、なんだかんだで藍莉のことが可愛いんだろうなーと思える登場の仕方で、
ニヤニヤしちゃいました。ラスト一行の藍莉の言葉で、藍莉の彼への想いも
伺えましたしね。暁の幻視探偵という特質もまだまだ未知数だし、これは是非とも
続編を書いて頂きたい!と思いましたね。
似鳥鶏『学生時代の母の原稿』
テーマは叙述トリック。叙述トリックって、Narrative trickって言うんですね。
初めて知った(^^;)。副題は、『違和感に注意せよ』。
ほぼ全編、主人公の母が学生時代に書いたと思われる創作ファンタジー小説で
構成されています。童話の人魚姫を基にしたような、人間と人魚の恋愛がテーマ。
ラストに、母が仕掛けた小説のトリックが明かされるという体裁。
これは一本取られたな~って感じ。お母さん、凄い。当時不登校だった娘に向けて、
こんな素敵な仕掛けが施せるなんて。まぁ、娘が解明した訳じゃなかったけど^^;
母親の、娘に対する愛情を感じて、グッと来る一作だった。これが最後で良かった
と思うな。謎を解いてくれた白玖君のキャラクターも良かったですね。