ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

町田そのこ「彼女たちは楽園で遊ぶ」(中央公論新社)

町田さん新刊。こちらも昨年末に読み終えてたのだけど、なかなか記事書く暇が

なくてなんかもう、大分記憶が薄れかけているのですが・・・^^;;

主人公は高校二年の神原凛音。夏休みが明けると、休み前に喧嘩別れして気まずく

なっていた親友の美央が学校からいなくなっていた。学校を退学して、山の中に

新しく出来た新興宗教団体・NI求会に家族で入会したらしい。自分に何ひとつ

告げずにいなくなった美央。凛音は、なんとかして美央に連絡を取ろうと試みる

が、電話もメールも繋がらない。美央はNI求会が掲げる『楽園』に閉じ込められて

いる――。なんとかして美央を助け出したい凛音は、偶然知り合ったドーナツ屋兼

便利屋をしているビビと共にNI求会を調べ始めるのだが――。

うーむ。町田さんにしてはなんかこう、中途半端な作品というか。ツッコミ所が

多いというか。辻村さんの『琥珀の夏』でも思ったのですが、好きな作家さん

でも宗教的な要素が入ると、なんか読んでて引いちゃうところがあるんですよね。

抵抗があるというかね。だから、いまいち作品に入っていけないところがあって。

そもそも、NI求会自体がものすごーく胡散臭い団体なんだもの。入会した家族の

子供たちは外界からシャットダウンされて、学校も行けないし、外出することも

叶わなくなる。当然携帯は没収されて、誰とも連絡を取れないように、会員以外

の人とは接触しないように隔離されてしまう。自分の子供がこんな異常な状況に

なってるのに、それを当然と受け入れる親の神経も理解出来ないですし。まぁ、

宗教ってそういうものなのかもしれませんが。

主人公である凛音の親友・美央は、突然家族に連れられてNI求会の一員にさせ

られてしまう。突然学校にも行けなくなって、変な山の施設に閉じ込められるって、

どんな罰ゲームなんだよ、と思いました。

でも、この作品で一番理解しがたかったのは、NI求会発足のきっかけが、『楽園の

楽園』という、伊坂幸太郎(作中ではKとされていますが)さんの小説である

ところ。最初読んでて、いきなり五十九彦とか蝶八隗とか、どっかで聞いたこと

ある名前が出て来てびっくりしました。ん?あれ?これって、伊坂さんの

小説に出て来たキャラじゃない?って戸惑いました。なんで、わざわざ町田さんの

作品に伊坂さんの小説が出て来るの!?って意味がわからなかったです。多分、

町田さんが伊坂さんの『楽園の楽園』を読んでインスパイアされて出来たのが

本書なんでしょうけど・・・わざわざ他人の小説使う意味ある?って正直

思っちゃいました。当然伊坂さんには許可取っているのでしょうけども・・・。

これが、文豪の作品とか古典の作品とかだったらまだ理解出来るんですけどね。

つい最近出たばっかりの現代作家の作品ですしね。これ、伊坂さんの作品読んで

ない方の方がかえって入って行きやすい気がするなぁ。下手に元ネタを知って

いるから違和感ばかりを覚えてしまったのかも・・・。

それに、NI求会に歯向かった人間(あるいは逃げた人間?)が次々と殺されて

行くのですが、その殺され方も眼球が抉り出されるという猟奇的なもので。

ホラーなのか、ミステリーなのか、どっちつかずな設定なのもちょっとね。

いろいろ詰め込みすぎて、本筋がどこかよくわからなくなってしまった印象も

受けましたね。

終盤、絢音姫と律の怨霊が出て来て『めぇ、ちょうだい』と迫るところは

完全にホラーでしたけどね・・・。

凛音とビビの関係とか、凛音と美央の友情とか、NI求会内で美央が知り合った

初花との友情とか、そういう人間ドラマの部分は良かったのですが。

ただ、最初東京からやって来て、田舎の子たちを見下すような態度を取っていた

初花が、美央と知り合って行動を共にするようになったら、急にいい子に

キャラ変したのが、ちょっと腑に落ちなかったです。

ラストは凛音と美央が仲直り出来て良かったです。でも、できれば初花も

そのまま一緒に友達でいられたら良かったのに。あの、最後の初花の設定、

いる?他にもあげられるものあったんじゃないの。そこはなんか、がっかり

だったな。

なんか、いろんな要素をぶち込み過ぎて、全部中途半端になっちゃってた

感じ。伊坂さんはこの作品どんな風に受け止めているのかなぁ。