ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西澤保彦「双死相殺 腕貫探偵リバース」(実業之日本社)

西澤さん最新作・・・にして、遺作になってしまうのかな?まだ連載もので本に

なっていない作品もあるかもしれませんが。腕貫探偵シリーズ最新作。最初に

このシリーズ読んだ時は、こんなに長く続くシリーズになるとは思っていなかった

なぁ。面白い設定だとは思ったけど。ちょっとづつ雰囲気が変わったりしつつも、

これだけ長く続いたというのは、きっと西澤さんご自身が気に入っていたシリーズ

だったんだろうな。腕貫さんの本名もプライベートも生い立ちも、結局何ひとつ

わからないまま終わってしまった。まぁ、それはそれでいいんだろうとは思うけど。

ミステリアスで神出鬼没な市役所の職員のままで。腕貫さんを愛するユリエ

さんとも、結局つかず離れずのままでしたね。腕貫さんはユリエさんのことを

一体どう思っていたのかな。恋愛関係にはなってない・・・ですよね??私が

忘れてるだけか?^^;あとがきで、これからのシリーズについて触れられて

いるのがとても悲しい。西澤さんは、少なくともあとがきを書いた昨年の5月

の頃は、自分の未来のことなんか何ひとつ悲観していなかったような書き方でした。

突然だったのでしょうか・・・それとも、ただ隠していただけだったのかな。

病気で苦しみながら、書き続けていらしたのだろうか。病魔に冒されていたなんて、

全く知らなかったから、訃報のニュースは本当に信じられなかったです。というか、

信じたくなかったです・・・。まだまだ、書き続けて頂きたかった。タック

シリーズの新作読みたかった。また『収穫祭』みたいなすごい作品書いてほしかった。

読んでる間も悲しくて仕方なかったです。

本の感想そっちのけで感傷的になってすみません・・・。

今回は、ユリエさんが探偵役を勤める作品と、腕貫さんが探偵を勤める作品、

両方入ってます。他人から聞いた不可解な殺人事件の謎を、話を聞いただけで

解き明かしてしまう安楽椅子探偵形式。腕貫さんはいわずもがなですが、ユリエ

さんも頭の回転早くてすごいですよね。腕貫さんを崇拝しているだけあるなって

感じ。少しづつ事件の真相に迫って行くところはさすがだな、と思わされました。

一話目の『すべてのその場の勢いで』は、丑の刻参りの為の五寸釘と藁人形が

キーポイントになって、意外な真相が炙り出される。今どき丑の刻参りって^^;

久しぶりに聞いたわ(苦笑)。

二話目は表題作の『双死相殺』。半世紀以上前の無理心中事件の真相を腕貫さんが

推理するもの。相談者にとっては、知らない方が幸せだった真相でしたね。

真犯人も動機も意外でした。西澤さんらしい男女のもつれ関係が出て来ますね

(◯ズではないですが)。

三話目の『此のすべて鏡像なる世界』は、マンションの一室で殺された男の部屋

を調べていた氷見刑事が見つけた一枚のDVDから、9年前に隣に建つ同じオーナー

のマンションで起きた事件との関連が炙り出されて行くお話。西澤さんの作品って

すごく緻密に出来ているのだけど、人間関係とか複雑で、どうしても一度読んだ

だけじゃ理解出来なかったりするんですよね^^;犯人が問題のDVDに関して、

余計な小細工を施したことで、皮肉にも犯罪の証拠になってしまったというケース

でした。

 

こんな緻密なミステリが生み出せる作家さんが亡くなられたことは、本当に

残念です。一時期百合ものばっかり書かれていて(まぁ、最近もそうだったけど)、

ちょっと辟易していたところはありましたが、それで見限る気持ちとかには

全然ならなかった。やっぱり大好きな作家さんでした。

御冥福をお祈り致します。