ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「●●にいたる病」(講談社)

我孫子さんの『殺戮にいたる病』へのオマージュアンソロジー。我孫子さんの

作家生活35周年記念に企画されたものだそう。『殺戮にいたる~』を読んだのは、

多分20代前半とかじゃないかな~。へたすると、大学生の頃かも??多分

姉が持っていた文庫で読んだんじゃないかな~。実家に行けば本があると思うけど。

当然ながら、全然内容覚えてないけど^^;なんか、めっちゃエグい作品だった

ことは覚えてますね。あと、ラストが衝撃だったという記憶もあります(どんな

衝撃だったかは覚えてないのだが^^;)。これを機に再読するのもありだとは

思うのだけど・・・結局予約本に追われて再読作品を読む余裕がないだよなぁ・・・。

『殺戮』の部分をそれぞれの作家が好きなテーマに変えて書かれています。我孫子

さんご自身も含め、六作が収録されています。本家を超える衝撃があったかと

いわれると、そこまでの作品はなかったかなぁって感じだけど、なかなかバラエティ

に富んだ作品が揃っているのではないかな。

 

では、各作品の感想を。

 

我孫子武丸『切断にいたる病』

さすがご本家という感じの、グロテスクな猟奇殺人事件。殺されたのはAV制作会社

の社長。事件の一週間程前に、看板女優が失踪していた。彼女にはその三ヶ月前

程からストーカーがつきまとっていた――。

ふむ。やはり、こうきたか、って感じのオチでしたね。若干読めてたところはあり

ましたね。上手いのは間違いないですけども。

 

神永学『欲動にいたる病』

警察官の中西は、目の前でたった今行われたであろう殺人現場を見て、美しいと

思った。そこには、血まみれの少年が、同年代の少年を滅多刺しにし、その

刺された少年をポニーテールの彼女が、自身も血まみれになって抱きしめている

姿があった――。

これは完全にミスリードさせられていましたね~。警察官の中西の過去と現在の

事件とを上手く絡ませていて、すっかり騙されてしまいました。上手い。

 

背筋『怪談にいたる病』

幽霊が見えるというその女性は、彼女がなぜその幽霊が見えるようになったのか、

その経緯を語り始めた。始まりは、彼女が大学に入って所属した映画研究部で

「彼」と出会ったことだったという――。

幸せな結婚をしていた彼女の生活に、少しづつ「彼」が入り込んで行く過程が

怖かったです。彼女の子供の絵が怖いし、ラストに明らかになる「彼」の

遺体の状況の真実に戦慄。そしてラスト一言の衝撃。「彼」の口癖である「巧いか?」

のセリフが、ラストであんな風に効いてくるとは・・・(絶句)。いやー、怖かった。

アジの開き見たら思い出しちゃいそうだよー(><)。短編としての完成度がとても

高いと思いましたね。

 

真梨幸子『コンコルドにいたる病』

作家のおれは、作家生活20年目にしてヒット作には恵まれず、深海魚状態に

あった。そんなおれに、久しぶりに禁談社の編集者から依頼が来た。依頼内容は

叙述トリックのミステリーだという。叙述トリックは作家の力量が試される為、

失敗した時の痛手が大きい。しかし住宅ローンも重くのしかかっており、仕方なく

引き受けることに。しかし、せっかく書いた原稿を、編集者の森はあっさり没に

した。書き直しても、書き直しても、森はボツを繰り返す――。

これは、世にいる作家さんが読んだら、誰しもが胸が締め付けられる気持ちになる

んじゃないでしょうか。こんな編集者がいたらと思うと・・・。ボツ原稿を延々と

読まされて、この後一体どんなオチになるかと思いきや・・・恨みを買いすぎた

ツケが回ってきたということでしょうね。

 

矢樹純『拡散にいたる病』

水科皐月は、深夜ラジオ番組の『印部鉄雄の陰々滅々ラジオ』の構成作家だ。ある日、

以前鉄雄がコーナーの一つで取り上げた、ある投稿に関してのクレームが来ていると

告げられる。クレームの主は佐藤梨穂という女性で、ラジオで取り上げられていた

怪談話が、自分の父親が以前に書いた小説の内容とそっくりだという。調べてみると、

確かにその小説は実在するとわかった。梨穂は和解の条件として、父親と住む青森

の自宅まで謝罪に来て欲しいというのだが――。

面倒なクレーマーが要求をどんどんエスカレートさせていくとかそういう系の話

なのかな、と思ったら、クレーマーが怪しげな健康食品を扱う教祖みたいな女で、

思わぬ展開になって面食らわされました。こんな怪しい健康食品を摂取しようと

思う人に気がしれないなと思いましたね・・・。

 

歌野晶午『しあわせにいたらぬ病』

介護施設に勤める比佐子は、休みで散歩に出かけようとしていたところ、施設から

電話が来て、水内季子・咲子母娘の自宅に様子を見に行って欲しいと言われる。

一緒に暮らす咲子の娘は泊まりの研修で東京に出かけており、あちらから連絡した

ところ、電話に出ないので、念の為見に行って欲しいというのだ。了承して現地に

赴いた比佐子だったが、インターホンを鳴らしても誰も応答しない。比佐子は、予め

教えられていた場所から合鍵を取り出し、鍵を開けて中に入った。すると、中には

女性二人の遺体があった――。

やりきれない事件でしたね。介護問題の行く末に起きた悲劇としか言いようがない。

ラスト、比佐子と同居している良治に関しては、完全にミスリードされていました。

比佐子の年で、介護というハードな仕事を続けなきゃいけない理由に、なんとも

言えない気持ちになりましたね・・・。今はこういう世帯が増えているんだろう

けどもね・・・。