
『スピノザの診療室』に続く、京都の地域病院で働く医師・雄町哲郎シリーズ二作目。
本屋大賞候補にもなってるんですよね。前作も良かったけれど、本書もとても
良かったです。大学病院で将来を嘱望される内視鏡外科医であったにも関わらず、
亡くなった妹の息子を育てる為にあっさりその地位を捨てて大学を去り、京都の
地域病院に移った哲郎。飄々とした哲郎のキャラはやっぱりいいですね。大掛かり
な外科医療手術が中心の大学病院とは違い、現在の哲郎の病院はどちらかというと、
末期の終末医療患者がメイン。常に死と隣合わせの患者と真摯に向き合い、それぞれ
の患者が最善の最期を迎えられるよう、手を尽くす。哲郎の医療との向き合い方は
いつも、すべての医者がそうであったらいいのに、と思えるくらい、真っすぐで、
頭が下がる思いがします。ほんとに、人生の最期にこういうお医者さんに看取って
もらえるなら本望だな、と感じますね。
今回哲郎は、大学病院時代の親友・花垣から、難しい症例の患者についての相談を
受ける。その患者は、よりによって、哲郎が大学を去る際に一悶着あった、飛良泉
教授の父親だった。花垣は、すでにこの手術に三度失敗していた。患者の年齢が
82歳と高齢なこともあり、次が最後のチャンスだと考えて、哲郎の手助けが必要だと
言うのだ。しかし、哲郎には迷いがあり、その場で即答は出来なかった。そんな中、
大学病院から週に一度哲郎の元に勉強に来ている研修医の南茉莉から、ある言葉を
かけられて――。
普段飄々としている哲郎が、得意の内視鏡手術の時になると、凄腕の外科医になる
ところは本当にかっこいい。その技術をひけらかさないところにも好感が持てます。
どんなに技術があっても、それを鼻にかけて偉そうにするような医者にはやっぱり
かかりたくないですもんね・・・。権力を持っているが故に高圧的になるような
医者はもっと嫌ですけど。飛良泉教授はそういうタイプかな、と思いましたが、
終盤の言動を鑑みると、そういう訳でもないようです。大学病院時代、哲郎の
医師としての腕を評価していたからこそ、哲郎が大学病院を去ったことが許せ
なかったんでしょうね。とはいえ、医者だってそれぞれに家庭の事情があります
からねぇ。あんな大人気ない態度に出るのはやっぱりね。まぁ、最終的には、
哲郎との蟠りが解けて、大学病院ともいい関係が築けそうで良かったです。
今回も特筆すべきは、甥の龍之介くんとの関係と、研修医の茉莉ちゃんとの関係
ですかね~。龍之介くんは、本当に良い子に育っていますね。やっぱり、哲郎の
妹である母親のポジティブな育て方が下地にあって、その上で哲郎の教えがある
訳ですもんね。花垣夫妻との交流も大きいでしょうけどね。龍之介くんには、
このまま真っすぐ育ってもらいたいなぁ。
茉莉ちゃんに関しては、もう完全にこれ、恋愛感情ありですよね・・・?今まで
茉莉ちゃん側からはそういう雰囲気を感じていたけど、今回は哲郎側にも意識の
変化があったように感じました。これから会う機会がさらに増えそうなので、
どんどん二人の距離は近づいて行きそう。茉莉ちゃんも真面目で医療に真摯に
向き合うタイプの良い子だから、お似合いだと思うけどな。
終末医療に携わるお医者さんは、本当に大変だと思う。でも、哲郎のように、
もう手の施しようのない患者に対しても、出来る限りの形で、悔いのないように
見送ってあげられるお医者さんは素敵だなぁと思います。やりきれない思いも
数しれず経験することになるでしょうけれど。だから、哲郎は患者さん
みんなに好かれるし、信頼されるんでしょうね。
ちなみに、タイトルのエピクロスは古代ギリシャの哲学者だそう(始めて知った)。
前作のスピノザに続き、哲学者がタイトルに入ってますね。このシリーズは、
毎回このパターンを踏襲して行くのかな~。次はどの哲学者でしょうかね。
そういえば、一作目なのかな?映画化が決まったそうですね。哲郎役は誰なのかな。
綾野剛あたりがハマってそうだけどな。