
オードリー若林さんの初小説。エッセイ的な作品は何冊か読んでいて、その時に
普通に小説書いても上手そうだなぁと思っていたので、ようやく出たか、という
感じでしたね。題材がアメフトっていうのは、いかにも若林だなぁ~って思い
ました。アメフト大好きですもんね。確か番組とかもオードリーでやってた
んじゃなかったっけ?(観たことないけど)見た目、全然アメフトとかやって
そうにない陰キャっぽいキャラなのにね(←失礼千万^^;)。
アメフトの試合になぞらえて、第一Q,、第二Q・・・みたいな章立てになってます。
四章からなる構成も、起承転結と共に、アメフトの試合構成と同じになっている
(多分?)ところがなかなか小技が効いていてニクイ。きちんと起承転結も
意識して書かれているしね。普通にエンタメ青春小説として面白かったです。
ただ、第一Q部分は、導入部分として、アメフトの説明が多くなるのも仕方が
ないとはいえ、いかんせん、特殊なアメフト用語の連続で、文章で書かれても
全く脳内で映像化出来ず、読むのがキツかった。その後に出て来る試合の
描写もそうなんですけど。ルールがわからない競技を文章で理解するのは
かなり素人には難しいですね・・・。アメフトに詳しい人ならもっと楽しめる
と思うのですが。かといって、いちいち用語の説明を入れると文章がくどく
なってそれはそれで読みづらいでしょうし、難しいところではあると思うけども。
ただ、万人に向けるエンタメ小説を目指すのであれば、その辺りの描写はもう
少しわかりやすくしてもらいたかったかも。わかる人だけわかればいい、みたいな
アメフト用語の羅列も多かったんで。もうちょい、読み手側に配慮する意識が
欲しかったというか。その辺りは、もう少しやりようがあると思うけどな。
脚注入れるとか・・・って、これはこれでくどいか。うーん。
ただ、それ以外の、アメフトにかける高校生の成長譚としては、とても良かった
と思います。勉強もダメだし、彼女もいない、アメフト以外のものには無気力な
高校三年生のアリ(中村昴)が主人公。アリの所属する総大三高は、春の大会で
強豪の遼西学園に惨敗した後、三年は引退。同級生たちは受験に向けて本腰を
入れ始めたが、アリは同じように受験に向き合う気になれず、不良たちとつるむ
ことが増えた。しかし、彼らのように不良にもなりきれず、中途半端な気持ちの
まま鬱屈とした日々を過ごしていた。そんな中、後輩の高山から、もう一度
アメフト部に戻って来て欲しいと言われ、戸惑いながらも再びアメフトと向き合
ってみようと決意するのだが――。
アリが、再びアメフト部に戻った辺りから、俄然面白くなりましたね。弱小アメフト
部では太刀打ちできないような強豪高相手に、どうやって立ち向かったらいいのか、
アリの友人で秀才の河瀬のアドバイスを聞きながら、試行錯誤して行く。この、
ブレーンの河瀬君のキャラクターがとても良かったですね。受験もあるのに、
親友のアリとアメフト部の為に、自分の時間を削って相手校との対策を考えて
くれて。もちろん、本人自身もアメフトが好きだからっていうのが大きいとはいえ。
その河瀬のアドバイスを、素直に聞いて真摯に練習に取り組むアリと高山の
向上心にもぐっと来ましたしね。他の後輩部員は、出戻り三年生のアリのことを、
正直扱いづらくて鬱陶しく思ってる感じだったけど、高山だけは最初から最後
まで、慕ってついて来てくれたのが嬉しかったですね(まぁ、そもそも高山が
戻って来てくれと誘ったので、当たり前といえば当たり前なのだけども)。
そこに、なんとなくついて来たダイブツのキャラも面白かったですね。っていうか、
このダイブツ、絶対モデルは春日だろうなって思いました(言動がモロに春日w)。
あと好きだったのは、アリと倫理の岩崎先生のシーン。勉強嫌いなくせに、なぜか
倫理について岩崎先生に質問しに行って、いろいろな話をするんですよね。岩崎
先生も、嬉しそうにその質問に答えてくれて。落ちこぼれ生徒にも、偏見の目を
向けず、一人の大事な生徒として向き合ってくれるいい先生だなって思いましたね。
それにしても、この作品、大分話題になっているようだけれど、時代設定が
時代設定なだけに、万が一映像化って話になったとしても、映像化出来ないシーンが
めちゃくちゃ多い。そもそも冒頭からして他校のアメフト部の盗撮シーンだし、
高校生の煙草や飲酒、バイクの盗難、試合中頻繁に出て来る◯ねの言葉。もう、NG
ワードがてんこ盛り。でも、この時代はそういう時代だったんだよね。ガラの
悪い高校の生徒は、当たり前にやっていたことばかり。今の時代には合わないの
かもしれないけど、当時の高校生のリアルな実態を描いているのは間違いない
ところで。編集者もこの内容で良くGOサイン出したなって思っちゃったけど。
今の時代に出すには、結構チャレンジャーな内容だなぁと思いましたね。
終盤の試合のシーンは、臨場感があって良かったですね。相変わらずアメフト
用語はわかんなかったけど。アリがゾーンに入って、1秒後の相手の動きがわかる
ようになったところはゾクッとしたな。普通に、エンタメ小説家として上手い
描写だと思いました。そこ以外にも、ちょこちょこ著者特有の言い回しの巧さ
に唸らされたしね。やっぱり、若林さん、文才あると思うな。
高校生のスポ根青春小説として、とても面白かったし、いい作品だと思いました。
今度はもうちょっと身近な題材の作品が読んでみたいなぁ。