ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「分水 隠蔽捜査11」(新潮社)

シリーズ最新作。

鎌倉で火事があったと竜崎の元に一報が入った。燃えたのは、地元の名士で、

現在も親子で政治家の安達家の自宅だという。息子の政孝は、女性スキャンダルで

世間の話題になっている最中だった。火事の原因はどうやら放火らしい。鎌倉を

地盤とする政治家宅の放火事件ということで、鎌倉署の署員たちは捜査よりも安達

親子の顔色を伺うことに躍起になっていた。物事に忖度出来ない竜崎には、彼らの

対応が奇妙に映るばかりだった。捜査本部が立ち、署員たちが捜査を進める中、

火災現場の野次馬の中に一番写っていた、報道系ユーチューバーのよしかずが

容疑者として浮かび上がる。しかし、放火の容疑者と目されたよしかずは、その後

遺体となって発見されてしまい――。

警察の政治家忖度が酷すぎて、何度もドン引きしました。いくら大物政治家だから

って、放火や殺人の事件で捜査しているのだから、毅然とした態度で臨めばいいのに

・・・とついつい思ってしまって。現実には、どんな業界だって力が強い人間に

忖度するのはごくごく当然の定石になっているのでしょうけどね。なんだかゲンナリ

してしまった。とはいえ、我らが竜崎はそういう忖度を一切しない態度を貫いて

くれているので、ご安心を。まぁ、周りに言われて、ちょいちょい態度を改めては

いましたけどね。でも、別に安達親子の顔色を伺ったりはしてないので。息子の

方はそういう竜崎にイラッとしてましたけど。逆に、父親の喜代助は、そういう

竜崎が気に入ったようで、用もないのに自宅に呼び寄せて世間話し始めたのには

ウケました。誰に対しても自然体の竜崎が新鮮だったんでしょうね。喜代助の

キャラはなかなか良かったな。傑物って感じで。普段は好々爺然としてるけど、

いざという時の一声に迫力があって、上に立つ人間だったことが伺えましたね。

竜崎を目の敵にしている、同期で警務部長の八島の言動にはムカムカさせられ

ましたね。典型的な長いものには巻かれろタイプ。上には大いに忖度して、自分

より下には傲慢な態度に出るっていうね。同期の竜崎に対しては、ライバル心燃やし

まくって、常に出し抜いて出世しようと企む姿勢にはうんざりでした。竜崎も

辟易してましたね。全然相手にしてないんだけどね(苦笑)。

ラストの八島に対する本音の一言には笑いました。最高のオチだった(笑)。

いつも泰然としている竜崎でも、苦手な人にはこういう手段に出るんだな~と

新鮮でした。

今回初登場のサイバー犯罪捜査課の三好のキャラは良かったですね。淡々と

自分の仕事を遂行する姿勢がなかなか好感持てました。竜崎も気に入って、

ラストで刑事部に引っ張って来れないかって言い出してましたもんね。ちょっと

驚きました。もし実現化したら、脇役キャラとして今後の作品でも活躍してくれ

そうです。

今回もやっぱり冴子さんは素敵でしたね。竜崎がどんな場所に異動になっても、

単身赴任は現実的ではないと言い切っていたのが心強かったです。竜崎はほんと

にいい奥さんもらいましたよね。たまには奥さん孝行して、感謝の気持ちを

伝えてあげて欲しいなぁ。