ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

上村裕香「ぼくには笑いがわからない」(角川書店)

はじめましての作家さん。デビュー作の「救われてんじゃねぇよ」は、図書館の

新刊情報でタイトル見た時ちょっと気になったんだけど、結局スルーしちゃったん

ですよね。「女による女のためのR-18文学賞」大賞作ということだったしね。

この作家さん、うえむらゆか(あるいはゆうか)さんとか、かみむらゆ(う)か

さんって読むのかな、と思って調べたら、かみむらゆたかさんとお読みするそう。

読めないって!^^;「女による~」の賞出身だから女性でしょうけど。

で、本書は言語学を専攻する大学生の青年が、憧れの女性とキスする為だけに

お笑いコンビでM-1を目指す青春小説。内容的には、又吉さんとかが書きそう

だけど、又吉さんより文章とかキャラ設定とかとっつきやすい感じではあった。

読みやすいというか。その分、あんまり深みみたいなものは感じなかったけど。

主人公の耕助は、京都の優秀な国立大学(京大でしょうね)で言語学を学ぶ

真面目な大学生。ある日、誘われて行った小劇場のお笑いライブで、憧れの

百合子さんに会う。百合子さんは、耕助の幼馴染がバイトする大学の地下の

バーの常連さんだった。その後百合子さんの好きなタイプが「自分のことを

笑わせてくれる人」で、今人気の学生お笑いコンビ「ミーレンズ」のファンだと

知り、耕助は幼馴染の将吉をコンビ相手に、M-1優勝を彼女に宣言する。

しかし、生真面目で勉強しかしてこなかった耕助には笑いのことがわからない。

そこでたまたま入った餃子屋の副店長が売れない芸人だと知り、弟子入りを志願す

るのだが――。

耕助の話すことは、基本自分が学んでいる言語学を下敷きにしているので、一般人

には何が何やらって感じでしょうね。私もさっぱり意味不明だった。お笑いも毎回

それが題材になってるし。他の題材ないんかい、とツッコミたくなりました(苦笑)。

ただ、私も大学は仏文学出身で、言語学の授業習ったことがあるので、ソシュールとか

シニフィエ、シニフィアンとかの用語くらいは馴染みがあったので、まだ他の人よりは

何の話ししてるのかくらいはわかったけどね(内容はやっぱりさっぱり?ですが)。

耕助はお勉強はとても出来るので、まず本からお笑いを知ろうとして、たくさん

読んだりするのですが、やっぱり、笑いって文章から学ぶものじゃないので、

なかなかうまく行きません。どこまでも真面目で頭でっかちなやつだな~と呆れ

ましたが、一途に真っすぐに、一生懸命お笑いを知ろうと四苦八苦する姿勢は

応援してあげたくなりましたね。その動機が、いくら「好きな女性とキスしたい」

という不純すぎるものだとしても・・・。

そのマドンナ百合子さんは、なんだか掴みどころのない人って感じで、耕助には

ハードルが高すぎるんじゃないの?とハラハラしました。結果、終盤で彼女の

本性が浮き彫りになって、やっぱり耕助が相手にする人じゃなかったと改めて

つきつけられましたしね。でも、そこで撃沈しても諦めないのが彼の良いところ

なのかな、と。辞めときゃいいのに、と思ったけどさ。百合子さんも、こんな

真面目で純情な青年を自分のいいように翻弄するなよ、と言いたくなりましたね。

でも、その耕助の純愛につきあわされてコンビを組まされた親友の将吉が一番の

被害者かもって思いました。口では嫌だ嫌だって言いつつも、なんだかんだで

耕助に付き合ってくれる将吉は本当にいい友達だなと思いましたね。成瀬シリーズの

島崎みたいな感じね。最後まで付き合ってくれたしね。いいやつすぎる(涙)。

笑いのことがわからない耕助が、お笑いのことを学んで実践していくうちに、少し

づつお笑いにハマって行くところは青春してて良かったかな。

人を笑わせるのって、本当に難しいし、大変だと思う。それだけに、すごく素敵な

職業だとも思う。

今後、二人のコンビがどうなるのか、M-1のその後はどうなったのか、気になる

終わり方でした。まぁ、二度目の一時も撃沈してそうですけどね(苦笑)。