桂望実さんの「Lady,GO!」。
派遣で働く23歳のOL、南玲奈。突然彼氏に別れを告げられ、派遣先からは契約
打ち切りを言い渡され、部屋のエアコンが壊れた。貯金も底をつき始め、生活は
貧窮。両親は離婚してそれぞれ新しい家庭を築いている。16歳の時から一人暮らしを
続ける玲奈には誰も頼る人がいなかった。そんな不幸のどん底にいたある日、お気に入りの
ホテルのロビーの場所で一人空想を続けていた玲奈は、高校時代の友人の姉の姿を見かける。
以前とは違いきらきらと輝いている彼女は、六本木のキャバクラのNo.1に上りつめて
いた。次の派遣先が決まらない玲奈は、彼女に誘われてキャバクラの世界で働き始める。
地味で目立たない自分などには到底勤まる仕事とは思えなかったのだが――。
面白かった。一気読みでした。
玲奈が少しづつ前向きになって成長して行く様が読んでいてとても小気味良かったです。
物語もテンポよく進んで行くので、読みやすい。そして何より玲奈の考え方にとても共感
できました。こういう、地味に真面目に働いているのに物事が上手くいかないという女性の
心情をとてもリアルに描いていると思いました。私は派遣会社で働いたことはないけど、
多分働いた経験のある方はもっともっと共感できる作品なのではないでしょうか。
家庭や職場から浮き立っているような気がする玲奈の孤独。それが痛い程伝わって来て、
最初の方は読んでいて胸が痛かったです。自分の居場所がどこにもないって、本当に
辛いと思う。私もどちらかというと玲奈みたいな性格に近く、他人と接する時に一歩
引いてしまうような所があるので、玲奈の行動や考え方はすごく身近に感じました。
玲奈は、普通の人よりほんのちょっと運が悪くて、何故かそういう不運が重なって物事が
上手くいかなくなってしまうタイプの人間。そして結局そういう境遇をすべて自分のせいに
してしまったりする。自分が暗いから、自分の容姿が可愛くないから、仕方ないんだと
諦める。‘ありがとう’より‘ごめんなさい’の数が多いのも、結局他人にいつも引け目を
感じているから。なんだか、自分の分身を見ているような気分になって、玲奈がとても
愛おしく感じてしまった。ただ、後半少しづつ成長を遂げる辺りは良いのですが、ラストは
ちょっと上手くいき過ぎてご都合主義的な印象もありましたが。それでも、玲奈が前向きに
新しい一歩を踏み出す様は格好よく、爽快でした。
キャバクラの世界も丁寧に描いていて面白かったですね。私にとっては未知の世界ですが、
キャバ嬢も成功する人はちゃんとそれなりに日々の努力をして、上位の地位を築いている
のだというのがよくわかりました。成功する人はただ待っているだけじゃなく、ちゃんと
それなりの代償を払っている。どんな仕事だって、ポリシーを持って努力しなければ成功
なんてあり得ないって教えてくれた気がします。
主人公の玲奈を取り巻く脇役のキャラも良かったですね。特におかまのスタイリストの
ケイのキャラは秀逸。彼(彼女?)がいて、玲奈は本当に救われたと思います。例え
約束に必ず遅刻して来ても、吐き出す言葉が嘘ばかりでも、ケイの存在がなければ
玲奈の成功はあり得なかった。ケイの嘘は優しいから許せる気がしました。夢を追いかけて
いるしほもキャバクラで働く玲奈にとっては大きい存在ですね。
全ての働く女性にエールを送るような作品です。
是非お手に取ってみて頂きたいです。