本格ミステリの巨匠笠井潔さんの「オイディプス症候群」。
ナディア・モガールと矢吹駆はウイルス性の奇病に冒された友人に頼まれて、彼の師である
マドック博士に資料を届ける為にエーゲ海に浮かぶ孤島・ミノタウロス島へと向かう。
その島に建つ奇妙な建築物「ダイダロス館」に集まった十人の男女が、ギリシア神話に見立てた
装飾を施されながら次々と殺されて行く。奇妙な連続殺人事件に挑むカケルの「本質直感」
とは――2003年本格ミステリベスト1位に輝いた、矢吹駆シリーズ第5弾。
読んだのは本書が発売されてすぐですが、何故今この記事を書くのかというと、最近本書が
ノベルス版でリニューアル発売されたということを耳にしたというのと、それ以上にお気に入り
登録させて頂いているbeckさんの「バイバイ、エンジェル」の記事に触発されたせいです。
一部の方には私がこのシリーズに並々ならぬ愛着を感じていることはご存知かと思います。
はい、その通り。このシリーズというか、このシリーズの主人公・矢吹駆に、といった方が
正しいでしょうか。一日一度しか食事を摂らず、真夏でも部屋の窓を閉め切り、チベットの
修行僧みたいなストイックな生活を続ける奇妙な青年。それが矢吹駆です。ヒロイン・ナディア
はパリに住んでいる大学生で、そんな偏屈な青年に仄かな恋心を抱いています。けれども駆本人は
全くその手のことには無頓着。というより無関心。つれない、とかそういうレベルではなく、
彼の頭の中には常に哲学だの現象学だのといった小難しい知識で占められているのですね。
それでも、刑事の娘であるナディアが厄介な事件を持ち込むと、鋭い考察力と本質直感を
駆使して事件を解決に導く。このシリーズの核となっているのは、圧倒的なまでの駆が述べる
哲学的考察です。おそらく、そこの部分に辟易される方も多くいるでしょうね。もちろん、
私も駆が語る哲学談義はほとんどが理解不能。ハイデガーだフーコーだって言われたって
何が何やら。それでも、その駆の哲学談義が殺人事件を解く上でも重要な役割を果たして
いるとも云える訳で、この作品には必要不可欠な部分であることも確かなのです。
さて、本書ですが、駆とナディア初の孤島もの。奇妙な伝染病あり、見立てあり、まさに
本格ミステリの王道を行くような舞台設定。ちょっと設定に懲りすぎて散漫になってしまった
きらいはあるものの、重厚さという点では読み応え十分。駆が何故か途中からぱったりと
出て来なくなってしまう所は不満でしたが、後半に入って意外な形で再登場するので、いつも
とは違った意味で楽しめました。宿敵イリイチとの対決はまたまた先送りになりましたが。
ミステリとしての完成度としては、前作の「哲学者の密室」には及ばないとは思いますが、
とにかく本書が出るまでの長い時間を考えると、1ページ1ページ読むのが嬉しくて仕方
なかったです(途中の哲学談義の辺りはやっぱり辟易したんですけど^^;)。もう、私に
とってはミステリとかどうでもいいんです(言っちゃった・・・)。
すいません、すいません・・・全然紹介記事になってません。私情が入りまくりで
上手く書けません。とにかく、小難しい薀蓄だらけですが、本格ミステリとしては楽しめる
筈です。いろんな批評でそれが消化出来てないとか書かれててもいいんです。薀蓄が余計
だとか無駄だとか酷評されてもいいんです。だって、だって~~~~、
駆が好きなんだもん!
もうこれ以上書くことありません。フェードアウト・・・(最低)。
※注1.beckさん、対抗した訳ではありません!
※注2.ゆきあやさん、泣いたりしませんよ!な、泣いたりなんか~~(>_<)。
※注3.しろねこさん、応援ありがとうございます!くろけん応援団に対抗して、
駆応援団を一人で立ち上げたいと思いマス・・・。abeさん入ってね(懇願)。