平山夢明さんの「独白するユニバーサル横メルカトル」。
2006年日本推理作家協会賞受賞、鬼才平山夢明初の短編集。残虐と狂気の果てにあるものは、
生理的嫌悪か、感動か――。絢爛たる8つの物語を収録。
ついに手をつけてしまいました。平山夢明。他の方からいろいろとご教示頂いていたので、
それなりに覚悟していたつもりでしたが、やはり本物は桁はずれでした。かなりバラエティに
富んだ短編集。とにかく、エグイ、気持ち悪い、後味が悪い。読んでて実際吐きそうになった
作品もちらほら。最近猟奇系ばかり読んで免疫がついていた筈の私でさえ、これは気が遠く
なりかけましたから、その手の作品がお嫌いな方、間違っても手をつけてはいけません。
・・・が、私、結構楽しめちゃいました。この人、相当才能あると思う。なんだかわからない
けど、すごいというのはひしひしと感じました。これは理屈でどうこうではなく、私の直感が
そう告げているのだから、仕方ありません。読んでて具合悪くなっても、本を閉じたいとは
思わなかった。意味不明の文章とかもいっぱいあったのに、読まずにいられなかった。
なんだろう、この才能は。とにかく読んでみて頂かないとこの感覚は説明できません。
生理的嫌悪しか感じない作品もありましたが、ものすごい才能の片鱗を感じさせる作品も
ありました。とにかくすごかったとしか言い様がないです。めくるめく酩酊感。まさしく、
平山文章に酔ったという感じ。
ただ、読んでいて、綾辻さんや京極さんが大絶賛しているのはよくわかりました。綾辻さんは
ほんと、こういうの好きそう(苦笑)。
ちなみに、一番良かったのは表題作の「独白するユニバーサル横メルカトル」。題名から、
内容が全く想像できないと思うのですが(私もそうだった)、題名の通りの作品なんです。
とにかく、これは素晴らしい出来。エグイのとかダメな方も、この作品だけでも読んでみて
欲しい。ちょっと驚く視点から書かれていて、全体の完成度の高さはダントツです。
不覚にも、弱冠語り手に感情移入さえしてしまった。だって健気なんだもの、語り手が。
あと個人的に良かったのは「無垢の祈り」。幼い少女に降りかかる運命の残酷さ。後味の良い
作品ではないけれど、何故かラストは救われた気がしてしまった。その後のことを考えると
決して救いのあるラストではないのですが。
それから、作品技巧的に優れていると思ったのは「オペラントの肖像」。最後の最後での
どんでん返し。やられた、という作品。やっぱり後味悪いけど。
ついでに、生理的嫌悪感のみを感じた作品は「Ω(オメガ)の聖餐」と「怪物のような顔の女
と溶けた時計のような頭の男」です。題名からしてすごそうですよね^^;グロいのダメな人
は絶対読まないで下さいね。卒倒しちゃいますよ^^;;