ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青井夏海/「そして今はだれも」/双葉社刊

青井夏海さんの「そして今はだれも」。

八十有余年の伝統校・明友学園に赴任してきた新任の坪井笑子。代々名門のお嬢様学校
として知られていたが、数年前に男子受け入れを開始し、共学校になっていた。知り合いの
つてでやっとのことで就職した学校だったが、何故か受け持ちは男子クラスだった。折り目
正しい品行方正な女子たちに比べ、男子は全く覇気のない生徒ばかりでスタートから手を焼く
笑子だった。しかし、生徒の一部から、数年前から何故か自主退学の女子生徒が続出している
という不可解な事実を聞かされた笑子は、生徒たちと一緒に真相解明に乗り出す。どうやら
退学者はある謎の教師Xから、弱みを握られて脅迫されていたようなのだ。Xの候補は男子
クラスを担当する第二職員室の教師たち。Xの正体とは誰なのか――。


前半部分の生徒と教師が一致団結(?)してXの正体を探ろうとするくだり辺りまでは
なかなか面白く読んだのですが、肝心のXの正体については途中であたりがついてしまいました。
まさかもうひとひねりあるよね、と多少期待して読み進めていったのですが、まんまその
通りだったという・・・これは、読んでいるほとんどの人がわかってしまうのではないかなぁ。
笑子が犯人と対決するくだりも、あまりにも犯人の反応が類型的すぎて、人物造詣という点でも
不満が残りました。
一番がっかりしたのは、被害者の一人である女子高生の、ラストにかけての、記憶を失くした
かつての恋人への態度。最後の涙はとってつけたようにしか思えなかったのですが。結局
彼女の真意がわからず仕舞いだったので、変に後味の悪いラストだったように思います。

青春ミステリと銘打ってる割に、主人公は女教師で生徒たちもいまひとつ活躍しないまま
で終わるので、やや肩透かしを食った感じ。それぞれの高校生キャラをもっと掘り下げて活躍
させればもうちょっと面白くなったのではないかなぁ。一樹や恭二のキャラはなかなか良かった
ので。
この題名にもちょっと疑問を覚えたんですけど・・・あんまり合ってないような。

う~ん、途中まではテンポ良く楽しめただけに、後半にはちょっとがっかりでした。
青井さんは「赤ちゃんをさがせ!」の助産婦シリーズみたいなほのぼの系を書いてた方が
合ってるのでは・・・と思ってしまいました。純粋な推理ものを目指して書かれたので
しょうけど。ちょっと厳しい評価になってしまいましたが、青井さんの文体などは好きなので、
次回作に期待します。